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クリスマス直前、おもちゃ選びの正解とは…知育? デジタル? “本当に子どもに良い”おもちゃを心理カウンセラーが提言

クリスマス…、子どもにどんなおもちゃを買うべき?
クリスマス…、子どもにどんなおもちゃを買うべき?
 クリスマスを前に、おもちゃ売り場が活況を呈している。おもちゃの種類もぬいぐるみや人形、積み木といった昔ながらのものから、ゲームをはじめとするデジタル玩具、学習効果をうたった知育玩具など多種多様だ。子どもは遊びを通して成長していくものであり、おもちゃも「なるべく子どもに良いものを」と考えるのが親心。とはいえ、これだけ種類があると、何をどう買い与えたらいいのか迷う親も多いはず。子どもの発達やメンタルケアに携わる心理カウンセラーの浮世満理子氏に、おもちゃ選びのアドバイスを聞いた。

【画像】心理カウンセラーも太鼓判! たまごから生まれるおもちゃの中身

■デジタルの影響も? 子どもの脳が「強い刺激を一方的に受け続ける」ことへの懸念

 子どもがおもちゃに魅せられるのはなぜか。心理カウンセラーの浮世氏は、「それは子どもの心と体が、本能的に成長を欲しているからです」と解説する。

 「動物は遊びを通して生きる術を習得していきます。それは人間も同じですが、特に人間ならではの情緒や感性はおもちゃで育まれる要素が多いんです。たとえばお人形遊びやおままごとは相手を思いやる想像力やコミュニケーション能力、空想する力、積み木や粘土はモノを作り出す創造力や表現力を伸ばすとされています。子どもにとっておもちゃは単なる楽しいモノを超えて、社会を擬似体験する重要な役割を果たしているんです」

 おもちゃで夢中になって遊んでいる時、子どもの脳はフルに活動しているという。

 「おもちゃの種類によって、刺激される脳の部位は違います。たとえばパズルやゲームは思考力や判断力、情報処理能力を司る脳を使いますが、一方でこうした“遊び方が完成されたおもちゃ”では情緒や感性を司る脳は動かされません。もちろん、どちらも子どもの成長において必要な脳の刺激です。ただ、昨今は情緒面が未発達な子どもが増えていることも少し懸念しています」

 これは「デジタルの影響も大きいのではないか」と浮世氏は推察する。

 「現代の子どもは、乳幼児の頃からネット動画が大好き。『動画さえ見せておけば、静かにしてくれて助かる』という親御さんもいるでしょう。ただ、動画の強い刺激を一方的に受け続けると、自分で考えて行動したり、他者と関わったりする力が育ちにくくなるという研究もあります」

 だからこそ、子どもたちには様々な種類のおもちゃでバランスよく遊んでほしいと浮世氏は願う。とはいえ、ただ多く買い与えればいいというものでもないらしい。昨今、おもちゃにも飽きっぽい子どもが増えたそうだ。

 「原因としては、おもちゃが手に入るプロセスが簡単になったこともあるでしょう。少子化もあって、昔のようにお兄ちゃんやお姉ちゃんからのお下がりも減りましたし、おじいちゃん、おばあちゃんもすぐに買い与えてくれますから。次から次へと新しいおもちゃを与えられると、『モノを大切にしなさい』と言われても、どう大切にしていいかわからなくなってしまうんですね。ただ人間は、実は“もらう”よりも“与える”ほうに幸福を感じる生き物なんです」

 “もらう”よりも“与える”ことに幸福を感じる――大人にも通じる話だが、確かにその通りかもしれない。モノがあふれた現代の子どもたちであっても、おもちゃを通して“与える”幸福を感じているのだという。

 「子どもは“自分より小さきもの”のお世話をするのが大好きです。たとえば、昔からミルク飲み人形という人気のおもちゃがありますね。あれは言うまでもなく、育児の疑似体験。親や家族から与えられた愛情や優しさを他者に展開する幸福を感じながら、心の健全な成長を促す、とても優れたおもちゃの1つだと思いますね」

 成長とともに子どもが興味を示すおもちゃは変わるが、愛情を注いだおもちゃの中には長年のパートナーになるものもある。

 「中でも、ぬいぐるみは典型例。赤ちゃんの頃は手で握ったり、口でカジカジしていたものが、幼児になると一緒におままごとするように。やがて思春期には、誰にも明かせない相談をする相手になったりもします。これだけ多種多様なおもちゃがあるのに、今も世界中でぬいぐるみが廃れないのは、子どもの成長や想像力でストーリーや関係性がどんどん変化していくからなのだと思います」

 愛情を注げてともに成長できる“小さきもの”といえば、ペットも思い浮かぶ。ただ、「幼い子どもにはリスクもあるので慎重に」と浮世氏は語る。そもそも、家庭や環境によっては動物を飼うのが難しい場合もあるため、昨今では代用にもなるペットトイが数多く存在するようだ。

 例えば、最近話題となっているのが『うまれて!ウーモ アライブ』というペットトイ。世界中で親しまれているという「ウーモ」は、たまごからぬいぐるみ(=ウーモ)が孵化する体験と、生まれた後のお世話遊びが楽しめるもので、浮世氏はこれを「ぬいぐるみとミルク飲み人形がハイブリッドした、進化系にしてお世話系おもちゃの原点」と評価する。

 「人間は自分が手をかければかけるほど、その対象を大切にするものです。たまごからお世話して孵化させた体験は子どもにとって大きな達成感ですし、その後もずっと愛着を持って大切にするのではないでしょうか」

 生まれた後のウーモは、撫でたりご飯をあげたりするとさまざまなリアクションをする。きちんとお世話すればダンスやおしゃべりの真似といった「うれしい」を返してくれるインタラクティブ系ぬいぐるみだ。

 「私が見ている子どもの中にも、『お友だちとどうしたら仲良くなれるかわからない』という子どもがいます。でも、優しくすれば相手は喜ぶし、乱暴にすれば悲しみますよね。ウーモは一方通行でなく対話型なので、こうした他者への想像力を育む練習相手にもなってくれるかもしれません。ミルク飲み人形とは違って、相手にどういうことをしてあげればいいか自分で考えられるのも大きい。人間として大切な、優しい気持ちを育ててくれるように思います」

 おもちゃ一つで、そこまで子どもの心を成長させてくれるとは。さらに浮世氏は、「赤ちゃん返りのケアにも良いのでは」と、意外な活用法も明かす。

 「ママが弟や妹につきっきりになると、子どもは一時的に赤ちゃん返りをするものです。でも、たまごの時からお世話してきた“小さきもの”の存在は、お兄ちゃん、お姉ちゃんになる心構えも育んでくれそうです。ちょっとした命の授業とでも言えるでしょうか。なんなら、育休前のパパにも勧めたいくらいですね(笑)」

 それぞれ異なる形で、子どもの心や脳に影響を及ぼす様々なおもちゃ。いよいよクリスマスやお正月シーズンに差し掛かり、子どもにおもちゃを買い与える機会も多くなるが、では一体、大人はどんなものを選んであげるべきか。浮世氏に聞くと、「何より子どもには触れて安心できる存在が必要」とのこと。

 「スヌーピーに、ライナスという毛布を引きずった男の子が登場しますが、“ライナスの毛布”というのは心理学用語にもなっています。子どもがふわふわの毛布やぬいぐるみに執着するのは、親から適切に自立していく成長のステップ。触感は五感の中でも最も原始的な感覚であり、情緒の安定はスキンシップによって育まれます。この触感の領域は、どれだけデジタルが発達してもカバーできません」

 デジタルのおもちゃやゲームでできることは多いし、知育玩具が育てる部分もあるだろう。だが、人間にはそれだけではフォローできない部分がどうしてもある。親としては、子のどんな部分を伸ばしたいか、どんな大人に成長してほしいかを考えながら、バランスの良いおもちゃ選びをしてみると良いかもしれない。

 「昨今、ヨーロッパではいわゆる知育玩具でも、学習系や情報系より、情緒を育むものが増えています。やはりデジタルでできることが増えた分、情緒面にフォーカスされるようになったのでしょう。特に知育に特化したおもちゃでなくても、子どもが触れて慈しんで愛情を注ぐ。そんな要素を含んだおもちゃも選んでみてほしいですね」

<プロフィール>
浮世満理子(うきよ・まりこ) アイディア高等学院学院長、全心連公認上級プロフェッショナルカウンセラー/メンタルトレーナー。『全国心理業連合会』代表理事。メディア出演・著書多数。https://www.idear.co.jp/

(文:児玉澄子)

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