【インフルエンザ】服用してはいけない“市販薬”は? とくに子どもには注意…相性悪い成分で「インフルエンザ脳症になる可能性が上がる」【内科医監修】
インフルエンザが全国的に大流行している。インフルエンザの症状といえば、急激な高熱、せき、のどの痛みや筋肉痛などが想起されるが、今年は少し様子が異なる。2024年の冬ならではの特徴は? 風邪や新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎など多くの感染症が流行っているなかで、どう判断すれば? 市販薬服用の注意点についても、クリニックフォア飯田橋院院長・田島敬也先生に注意点などを聞いた。
【一覧】イブプロフェン配合はNG!? インフルで服用してOKな市販薬は?(厚労省推奨)
■「高熱も出ていないし関節痛もない」風邪のような軽い症状、でも「感染力は強い」
――やはり、インフルエンザの患者さんは増えていますか?
「例年は11月末から12月最初の時期から患者数が増え、ピークは1月頃というパターンが多いのですが、今年は違います。1ヵ月も早い10月頃からインフルエンザに罹患した患者さんが出てきて、この12月頭にかけて急激に増えている印象です。しかもおそらく、これはまだピークではない。今後さらに増加しそうで、ちょっと恐ろしいですね」
――症状も例年と違いますか?
「インフルエンザといえば、高熱や関節痛、筋肉痛などが代表的。でも今年は、『高熱も出ていないし関節痛もない。風邪かな?』と、受診する方がいます。でも検査してみると、実はインフルエンザだったという場合も散見されます」
――何が起こっているのでしょう。
「コロナ禍の間、みなさん感染対策をしていたためにインフルエンザも減ったのは良かったのですが、そのぶん免疫がつきませんでした。だから、コロナ禍が緩和した昨年になって一気に患者数が増えたのだと思われます。年間を通して、インフルエンザA型・B型ともに多かったです。そうして昨年免疫を獲得した方が多かったので、今年は症状が出づらい。風邪のような症状だけに留まる方もいるのかもしれません」
――症状が軽めとなると、風邪と勘違いする人が増えそうです。
「そうですね。風邪をはじめ、流行中のほとんどの感染症が、鼻水・せき・のどの症状という3つが出るので、判断しにくい。風邪だと思ってしまい、病院へかからない場合も多いようです。ただ、インフルエンザは症状が軽くても感染力は強いので、結果、職場や学校で流行しやすくなっていると思われます」
――症状が軽く、風邪だと思って市販薬で様子見する人も多いのでは。実はインフルエンザだったという場合、市販薬でもなにか効果は期待できるのでしょうか。
「実は、風邪の総合感冒薬や市販の解熱剤には、インフルエンザととても相性の悪い成分が含まれているものもあるのです。その成分が、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリンといったNSAIDs(エヌセイズ)系の解熱鎮痛薬です。みなさんにも身近なものだと思いますが、この成分が入った薬を使うと、インフルエンザ脳症になる可能性が上がると言われています」
──インフルエンザ脳症とは?
「特に、脳の機能が未熟なお子さんに起こりやすいのですが、意識がぼうっとしたり、けいれんを起こしたりします。後遺症もあり、特にけいれんなどは繰り返してしまうこともありますね。一方で、大人はインフルエンザ脳症にはなりにくいといわれていますが、お子さんと同じくインフルエンザにかかった際はNSAIDsの使用は慎重にすべきであるとされています」
――とくにお子さんには気を付けるべきですね。
「はい。インフルエンザ脳症になる可能性を少なくするため、病院ではインフルエンザが疑われる場合は、アセトアミノフェンを成分とした解熱鎮痛剤を処方します。みなさん、症状が軽いからといって『風邪だろう』と市販薬で様子見する場合も、実はインフルエンザである可能性もある。少しでも疑われる場合は、NSAIDsの成分が入っていない薬を選ぶなど注意が必要です」
――なるほど。薬といえば、インフルエンザには予防薬はあるのでしょうか?
「インフルエンザの治療薬に内服薬のタミフル・ゾフルーザ、吸入薬のリレンザ・イナビルなどがありますが、これらの薬剤は予防薬としても使用でき、内服や吸入により、大体10日間ほど予防効果があります。家族にインフルエンザが出たたり、受験生で休めないときなどは、病院で処方してもらうのも良いでしょう。外出を避けたいときにはオンライン診療でも処方可能です。予防の場合は保険適用ではなく自費になりますが、安心はできると思います。とにかく、風邪のような症状が出た場合や少しでもインフルエンザが疑われる場合は、症状が軽くともお医者さんにかかることをおすすめします」
【監修】
田島敬也(たじまたかや)
クリニックフォア飯田橋院院長。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析学会専門医、日本内分泌学会専門医。2010年に慶應義塾大学を卒業後、腎臓・内分泌疾患をはじめとした総合診療や医学教育に従事。2023年よりクリニックフォア飯田橋院院長に就任。
(文:衣輪晋一)
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――やはり、インフルエンザの患者さんは増えていますか?
「例年は11月末から12月最初の時期から患者数が増え、ピークは1月頃というパターンが多いのですが、今年は違います。1ヵ月も早い10月頃からインフルエンザに罹患した患者さんが出てきて、この12月頭にかけて急激に増えている印象です。しかもおそらく、これはまだピークではない。今後さらに増加しそうで、ちょっと恐ろしいですね」
――症状も例年と違いますか?
「インフルエンザといえば、高熱や関節痛、筋肉痛などが代表的。でも今年は、『高熱も出ていないし関節痛もない。風邪かな?』と、受診する方がいます。でも検査してみると、実はインフルエンザだったという場合も散見されます」
――何が起こっているのでしょう。
「コロナ禍の間、みなさん感染対策をしていたためにインフルエンザも減ったのは良かったのですが、そのぶん免疫がつきませんでした。だから、コロナ禍が緩和した昨年になって一気に患者数が増えたのだと思われます。年間を通して、インフルエンザA型・B型ともに多かったです。そうして昨年免疫を獲得した方が多かったので、今年は症状が出づらい。風邪のような症状だけに留まる方もいるのかもしれません」
――症状が軽めとなると、風邪と勘違いする人が増えそうです。
「そうですね。風邪をはじめ、流行中のほとんどの感染症が、鼻水・せき・のどの症状という3つが出るので、判断しにくい。風邪だと思ってしまい、病院へかからない場合も多いようです。ただ、インフルエンザは症状が軽くても感染力は強いので、結果、職場や学校で流行しやすくなっていると思われます」
――症状が軽く、風邪だと思って市販薬で様子見する人も多いのでは。実はインフルエンザだったという場合、市販薬でもなにか効果は期待できるのでしょうか。
「実は、風邪の総合感冒薬や市販の解熱剤には、インフルエンザととても相性の悪い成分が含まれているものもあるのです。その成分が、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリンといったNSAIDs(エヌセイズ)系の解熱鎮痛薬です。みなさんにも身近なものだと思いますが、この成分が入った薬を使うと、インフルエンザ脳症になる可能性が上がると言われています」
──インフルエンザ脳症とは?
「特に、脳の機能が未熟なお子さんに起こりやすいのですが、意識がぼうっとしたり、けいれんを起こしたりします。後遺症もあり、特にけいれんなどは繰り返してしまうこともありますね。一方で、大人はインフルエンザ脳症にはなりにくいといわれていますが、お子さんと同じくインフルエンザにかかった際はNSAIDsの使用は慎重にすべきであるとされています」
――とくにお子さんには気を付けるべきですね。
「はい。インフルエンザ脳症になる可能性を少なくするため、病院ではインフルエンザが疑われる場合は、アセトアミノフェンを成分とした解熱鎮痛剤を処方します。みなさん、症状が軽いからといって『風邪だろう』と市販薬で様子見する場合も、実はインフルエンザである可能性もある。少しでも疑われる場合は、NSAIDsの成分が入っていない薬を選ぶなど注意が必要です」
――なるほど。薬といえば、インフルエンザには予防薬はあるのでしょうか?
「インフルエンザの治療薬に内服薬のタミフル・ゾフルーザ、吸入薬のリレンザ・イナビルなどがありますが、これらの薬剤は予防薬としても使用でき、内服や吸入により、大体10日間ほど予防効果があります。家族にインフルエンザが出たたり、受験生で休めないときなどは、病院で処方してもらうのも良いでしょう。外出を避けたいときにはオンライン診療でも処方可能です。予防の場合は保険適用ではなく自費になりますが、安心はできると思います。とにかく、風邪のような症状が出た場合や少しでもインフルエンザが疑われる場合は、症状が軽くともお医者さんにかかることをおすすめします」
【監修】
田島敬也(たじまたかや)
クリニックフォア飯田橋院院長。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析学会専門医、日本内分泌学会専門医。2010年に慶應義塾大学を卒業後、腎臓・内分泌疾患をはじめとした総合診療や医学教育に従事。2023年よりクリニックフォア飯田橋院院長に就任。
(文:衣輪晋一)
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