50周年ハローキティの“リボン”の秘密…平成ギャルよりキティが先? 令和の意外な推しは? 担当デザイナーが明かす
今年、50周年を迎えたハローキティ。11月1日は、そんなキティの誕生日。アニバーサリーの今年はシナモロールやポムポムプリン、クロミやハンギョドンもリボンをつけたデザインでお祝いしている。そんな、キティにとってトレードマークとなっているリボンだが、実はそこに秘密や意外なトリビアがあるとか。キティを世界的な人気者に育て上げた担当デザイナー・山口裕子さんに、リボンへの思いや、まさかのギャルからの影響まで、じっくり聞いてみた。
【画像】令和のいま大人気なのは…日焼けしたデザインのキティって!?
■ハローキティのリボンは右? 左? 顔やおヒゲにも秘密が…
――ハローキティといえば赤いリボンのイメージ。実はこのリボンには意味があるそうですね。
「ハローキティのリボンには、気持ちと気持ちを結ぶ『なかよしのしるし』という思いが込められています。例えば35周年のときに打ち出したのは、『心と心を結ぶリボン』というテーマ。ファンのみなさんへの感謝の気持ちや、キティを中心とした友だちとの愛、親子の愛…。親子3代でファンの方も多いと聞いていたので、そんな意味を込めました」
――今やリボンだけでキティとわかるほど浸透していますが、最初から?
「私が担当し始めた頃はそうでもなくて。キャラクターにとってわかりやすく目に焼き付くアイコンは大事ですが、キティにはないなと思っていて。今のように象徴的になったのは、やはり30周年の頃ですね」
――そんなキティのリボンには、秘密もあるとか…。
「実はリボンが左右対称じゃないこと。向かって右のほうが少しだけ小さくなっているんです。完全に左右対称にすると頭からリボンが落っこちそうに見えてしまうので、デザインのバランスを取っているんですね。それはキティの顔も同じ。左右対称にするとどこか機械的に見えてしまうので、おヒゲの高さも違います」
――言われてみると確かに! また、双子の妹ミミィもリボンをつけていますが、ここにも何かトリビアが?
「キティはつねに左の耳にリボンをつけていて、ミミィは右の耳。双子なので、ママが間違えないようにそうしています。ときどき2人が頭の中央にリボンをつけることもあるんですが、そのときはリボン以外のものを左右につけて、見分けがつくようにしています」
――キティがリボン以外のものをつけるときも?
「初めてリボンではないモチーフのキティを描いたのは、1994年。夏だったので頭にハイビスカスの花飾りを付けたキティをデザインしたんですが、『リボンがないなんてキティじゃない!』と怒られると思いきや、誰にも何も言われなくて(笑)。だったら、髪飾りも衣装ももっと挑戦できるんじゃないかなと考えるきっかけになりました」
──当時のギャルはみんな頭にハイビスカスを付けていましたね。放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK)にも登場しています。
「ギャルブームが来たのは、キティがハイビスカスをつけるのより後だったんじゃないかな。ただ、たしかにその頃から渋谷で頭にハイビスカスを付けた高校生がちらほら増えていて。テレビのインタビューで『キティちゃんの真似をしています』と答えていた子もいました」
──まさか、ギャルよりキティちゃんの方が先だったとは。
「いつしかサイン会にも、ギャルの子たちが殺到してくれるようになって。面白いことを言う子も多かったです。『キティちゃんがハチになったら可愛いんじゃない?』という一言をヒントに、ハチのコスプレをしたキティを描いたこともありましたね。この時、頭にはリボンの代わりにお花とてんとう虫をつけました」
■「おしゃれじゃない」と言われたハローキティ、大人気ピンクのデザインはMILKからヒント
――さすが、ファッションアイコンのキティですね。
「でも、最初からそうだったわけでもなくて。私がデザイナーに就任した1980年はキティ低迷期で、昔はキティグッズを買っていたという人に『なぜ買わなくなったんですか?』と聞いたら、『いつも同じ商品しかないし、いつも同じ服でおしゃれじゃない』と言われて」
──海外セレブも認めるおしゃれなキティちゃんが…?
「それまでのキティは、小さな子向けのグッズをメインに出していました。だから中学生くらいになると、みんな卒業していったんです。ただ、中には『本当は今でもキティが好き。私たちが持てるグッズを作ってください』とお手紙をくれる高校生の子もいて。だったらキティも進化しなければいけないなと、その頃からトレンドを勉強するために毎日のように原宿に通うようになったんです」
――そうやって進化していったんですね。
「ピンク色のシリーズを考えたときも、当時は『ピンクは赤ちゃんの色だ!』と言われて(笑)。でも、ファッションブランド・MILKのオーナーから『絶対ピンクの時代が来る』と聞いていたので、私には自信があったんですよ。キャラクター業界としてピンクを牽引していかなきゃと思ったし、何か変えていかないとキティも進化していかない。あとからトレンドに乗るのでは、追っかけになってしまいますからね」
──トレンドを察知しながら、どんどんおしゃれに。ほかにも、時代に合わせたデザインやグッズはありますか?
「当時の高校生が持てるように、流行っていた原宿のDCブランドを象徴するモノトーンデザインを作ったり。ピンクのデザインを出したら、それがOLさんに売れていると聞いてビックリしたこともありました。ならばOLさん用にケータイストラップやケース、PCグッズを作り。主婦に売れていると聞けば、トイレ・キッチンのグッズも作りました」
――では、今のトレンドを取り入れるならどんなデザインに?
「今は昭和や平成の頃のようなわかりやすい流行がない時代。ただ、ファッションは何年かおきにブームが繰り返されるもので、2020年代に入ってからは昭和~平成レトロがトレンドですよね。キティの50周年グッズでも当時のリバイバルデザインをたくさん取り入れたグッズをつくりました。中でも人気なのが、“日焼けしたデザイン”。海外の方にもよく『どこで買えるんですか?』と聞かれるんですよ」
――日焼けしたデザイン?
「今の子は90年代の日焼けブームを知らないはずだし、日焼けサロンに行く人も少ないのに(笑)。かつては高校生やセレブが流行を発信してみんなが真似していたけど、今はSNSの影響でしょうね」
――今は推し活も流行っていますが、若い人たちからキティはどんなところが推されていると思いますか?
「自分の好みのキティが集められることじゃないでしょうか。服の色、リボンの色、いろんな色がある。キティはそのあたりの自由度が高いのもあるのかなと」
──では最後に、50周年を迎えた今、山口さんはキティにどんな思いがありますか?
「私にとってのキティは、80年代の頃は友だち、90年代は自分の分身、2000年代は自分の事務所のタレントで、私がプロデュースしているような存在でした。今後は、50年経ってもファンでいてくれる人たちに、幸せを与えるPR大使のようになってほしいなと。3世代で愛してもらえるのも、お父さんお母さんが『いいキャラクターだ』と思って子どもに持たせてくれているおかげだと思います。4世代以降も愛してもらうためには、リバイバルも必要だし、新しい感覚も必要。グッズを持つことで仲良くなれる、コミュニケーションツールとしてのキティになっていってほしいなと思いますね」
(文:児玉澄子)
(C)2024 SANRIO CO., LTD. 著作:(株)サンリオ
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――ハローキティといえば赤いリボンのイメージ。実はこのリボンには意味があるそうですね。
「ハローキティのリボンには、気持ちと気持ちを結ぶ『なかよしのしるし』という思いが込められています。例えば35周年のときに打ち出したのは、『心と心を結ぶリボン』というテーマ。ファンのみなさんへの感謝の気持ちや、キティを中心とした友だちとの愛、親子の愛…。親子3代でファンの方も多いと聞いていたので、そんな意味を込めました」
――今やリボンだけでキティとわかるほど浸透していますが、最初から?
「私が担当し始めた頃はそうでもなくて。キャラクターにとってわかりやすく目に焼き付くアイコンは大事ですが、キティにはないなと思っていて。今のように象徴的になったのは、やはり30周年の頃ですね」
――そんなキティのリボンには、秘密もあるとか…。
「実はリボンが左右対称じゃないこと。向かって右のほうが少しだけ小さくなっているんです。完全に左右対称にすると頭からリボンが落っこちそうに見えてしまうので、デザインのバランスを取っているんですね。それはキティの顔も同じ。左右対称にするとどこか機械的に見えてしまうので、おヒゲの高さも違います」
――言われてみると確かに! また、双子の妹ミミィもリボンをつけていますが、ここにも何かトリビアが?
「キティはつねに左の耳にリボンをつけていて、ミミィは右の耳。双子なので、ママが間違えないようにそうしています。ときどき2人が頭の中央にリボンをつけることもあるんですが、そのときはリボン以外のものを左右につけて、見分けがつくようにしています」
――キティがリボン以外のものをつけるときも?
「初めてリボンではないモチーフのキティを描いたのは、1994年。夏だったので頭にハイビスカスの花飾りを付けたキティをデザインしたんですが、『リボンがないなんてキティじゃない!』と怒られると思いきや、誰にも何も言われなくて(笑)。だったら、髪飾りも衣装ももっと挑戦できるんじゃないかなと考えるきっかけになりました」
──当時のギャルはみんな頭にハイビスカスを付けていましたね。放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK)にも登場しています。
「ギャルブームが来たのは、キティがハイビスカスをつけるのより後だったんじゃないかな。ただ、たしかにその頃から渋谷で頭にハイビスカスを付けた高校生がちらほら増えていて。テレビのインタビューで『キティちゃんの真似をしています』と答えていた子もいました」
──まさか、ギャルよりキティちゃんの方が先だったとは。
「いつしかサイン会にも、ギャルの子たちが殺到してくれるようになって。面白いことを言う子も多かったです。『キティちゃんがハチになったら可愛いんじゃない?』という一言をヒントに、ハチのコスプレをしたキティを描いたこともありましたね。この時、頭にはリボンの代わりにお花とてんとう虫をつけました」
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――さすが、ファッションアイコンのキティですね。
「でも、最初からそうだったわけでもなくて。私がデザイナーに就任した1980年はキティ低迷期で、昔はキティグッズを買っていたという人に『なぜ買わなくなったんですか?』と聞いたら、『いつも同じ商品しかないし、いつも同じ服でおしゃれじゃない』と言われて」
──海外セレブも認めるおしゃれなキティちゃんが…?
「それまでのキティは、小さな子向けのグッズをメインに出していました。だから中学生くらいになると、みんな卒業していったんです。ただ、中には『本当は今でもキティが好き。私たちが持てるグッズを作ってください』とお手紙をくれる高校生の子もいて。だったらキティも進化しなければいけないなと、その頃からトレンドを勉強するために毎日のように原宿に通うようになったんです」
――そうやって進化していったんですね。
「ピンク色のシリーズを考えたときも、当時は『ピンクは赤ちゃんの色だ!』と言われて(笑)。でも、ファッションブランド・MILKのオーナーから『絶対ピンクの時代が来る』と聞いていたので、私には自信があったんですよ。キャラクター業界としてピンクを牽引していかなきゃと思ったし、何か変えていかないとキティも進化していかない。あとからトレンドに乗るのでは、追っかけになってしまいますからね」
──トレンドを察知しながら、どんどんおしゃれに。ほかにも、時代に合わせたデザインやグッズはありますか?
「当時の高校生が持てるように、流行っていた原宿のDCブランドを象徴するモノトーンデザインを作ったり。ピンクのデザインを出したら、それがOLさんに売れていると聞いてビックリしたこともありました。ならばOLさん用にケータイストラップやケース、PCグッズを作り。主婦に売れていると聞けば、トイレ・キッチンのグッズも作りました」
――では、今のトレンドを取り入れるならどんなデザインに?
「今は昭和や平成の頃のようなわかりやすい流行がない時代。ただ、ファッションは何年かおきにブームが繰り返されるもので、2020年代に入ってからは昭和~平成レトロがトレンドですよね。キティの50周年グッズでも当時のリバイバルデザインをたくさん取り入れたグッズをつくりました。中でも人気なのが、“日焼けしたデザイン”。海外の方にもよく『どこで買えるんですか?』と聞かれるんですよ」
――日焼けしたデザイン?
「今の子は90年代の日焼けブームを知らないはずだし、日焼けサロンに行く人も少ないのに(笑)。かつては高校生やセレブが流行を発信してみんなが真似していたけど、今はSNSの影響でしょうね」
――今は推し活も流行っていますが、若い人たちからキティはどんなところが推されていると思いますか?
「自分の好みのキティが集められることじゃないでしょうか。服の色、リボンの色、いろんな色がある。キティはそのあたりの自由度が高いのもあるのかなと」
──では最後に、50周年を迎えた今、山口さんはキティにどんな思いがありますか?
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(文:児玉澄子)
(C)2024 SANRIO CO., LTD. 著作:(株)サンリオ
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