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岸洋佑、主題歌を担当した『追想ジャーニー リエナクト』への思い「ど真ん中でぶつかりました」

映画『追想ジャーニー リエナクト』の主題歌「表紙絵-samune-」を担当した岸洋佑 (C)ORICON NewS inc.
映画『追想ジャーニー リエナクト』の主題歌「表紙絵-samune-」を担当した岸洋佑 (C)ORICON NewS inc.
 俳優の松田凌、渡辺いっけいが過去と現在の同一人物を演じる映画『追想ジャーニー リエナクト』が公開中。そんな映画の主題歌「表紙絵-samune-」を担当するのが歌手で俳優の岸洋佑。ORICON NEWSでは、岸にインタビューを実施。さまざまな思いを聞いた。

【写真】ギターを持ち笑顔の岸洋佑 間もなく9周年の『キュウレンジャー』への思いも

■担当する主題歌に込めた思い「聞きどころはサビ」 映画への思いも

 2022年に劇場公開され、高崎映画祭邦画ベストセレクションに選出された藤原大祐初主演の映画『追想ジャーニー』。過去と未来の自分との会話劇を軸に人生を舞台と捉え、ステージ上で展開する独特の表現方法が話題となり、多くの声援を受けた作品の第2弾が本作となる。次回作の筆が一向に進まない悩める脚本家の横田雄二(渡辺いっけい)の元に差出人不明のメールが届く。メールには「退行睡眠 失った記憶を取り戻し現代人のストレスをなくします!」の一文。横田は退行睡眠を使い30年前の自分に会い、助言し鼓舞することで、売れる脚本家へと導こうと試みる。一方、過去の横田(松田凌)は描いていた自分の理想像とかけ離れた自分に当惑するものの、未来から来たと言う自分の勧めに応じ、演劇仲間である峯井(樋口幸平)、中村(福松凜)と固く結んだ約束や、自分のファンである麻美(新谷ゆづみ)との出会いを契機として分岐する新たな世界線を辿ることになる。選ばなかった選択を過去の自分に選ばせることで、物語は追想の域を超えて展開し始め、クライマックスへと向かっていく。果たして横田は自身の手で未来を変えることができるのか。

――本作は、どんな作品になっているでしょうか?
【岸】この作品は『追想ジャーニー』という言葉の通り、過去に思いを馳せ、昔の自分に会いに行って「お前、俺のために人生変えてくれ。未来を変えてくれ」と言う。同じ人間同士の主人公が2人いて、これからの未来をどう変えていくかという映画になっております。人間、戻りたいなって思うことが絶対にあると思うんです。ある種、普遍的な作品かと思います。

――同一人物を演じた松田凌さんと渡辺いっけいさんの顔が似てくるような感覚になりました。
【岸】わかります!松田さんといっけいさんがお芝居をしている中で、すごくお互いが刺激を受けながらやってるな、芝居合戦してるな、という気持ちに僕は見ていてなりました。

――そんな作品の主題歌を務めます。楽曲の構想は?
【岸】まだ『追想ジャーニー リエナクト』ではなく、『追想ジャーニーII』と呼ばれていた時に「主題歌を書かない?」と言っていただけて。二つ返事で「書きます」と言いました。粗編集の作品を最初から1度だけ見ると決めて、1度だけ見て書きました。

――最初に何を感じたんでしょうか?
【岸】ど真ん中だと思いました。舞台のようにしたりと、奇をてらった、少し難しそうな映画なのかなと思いきや、僕はど真ん中だと思ったんです。なので僕もど真ん中でぶつからなければならないなって思ったのが最初の印象でした。

――楽曲を作る上で心掛けたことを教えてください。
【岸】今回は絶対に歌詞を先に書こうと決めました。ちょうど飛行機に乗っている間に1時間で書いたんです。そのまま家について、メロディを入れました。直前に映画を見たこともあって「この気持ちのまま、今日中に完成させなければならない」と思って作りました。曲を作るようになって、10年以上経ちますが、結局バージョン1や2が、バージョン13に負けることがないんですよ。ここはこうじゃないかな、こうじゃないかなとやるより、何もしてない、ちょっと足りないぐらいの1や2が1番良かったりするんですよ。これは作曲家あるあるなのか、みんな言うんですよ。これはバージョン13まで作ったことが何回もある人しかわからないと思うんですけど。僕はそれがありすぎて(笑)。絶対にバージョン1か2で終わらせると決めて作りました。

――そういう部分は劇中で悩む脚本家の雄二と似ていますね。
【岸】結構リンクしてました。だから改めて映画見て「うわ、わかる…」と。いっけいさんが「お前、ここから書けなくなるだろ」というようなシーンがあったり、これから先の曲が全部同じオチになりそうで怖くなったり…。気を付けねえとみたいな感覚になりました。この作品に関わることになったきっかけも去年『ARTISTS LEAGUE 2023』という大会で優勝したから。この作品でも賞を取ったことにかまけて、売れなくなった…。おっと!みたいな(笑)。俺に対して、気をつけましょう、と言ってるのかなみたいな。そんな気持ちにはなりました。

――完成した「表紙絵-samune-」の聞きどころは?
【岸】結構わかりやすく、サビがドーンと来るサビなんです。それにどうしてもしたかったんです。しかも、サビに1番伝えたいことを入れてるんです。Aメロ、Bメロは、ちょっと抽象的に書いてるんです。それは脚本家の心情を書いたつもりなんです。脚本家や物作りの人たちって、周りの人にはなかなか理解されないような脳みそをしていると僕は思っていて。「今までのは全部嘘 それこそが嘘 むしろ愛」という歌詞の意味はわからないですよね?でも、書いてる時は本当にそう思ってるんですよ。その不思議な、理解してもらえないけど、どこか切ないような、という歌詞をAメロ、Bメロで僕は書きたくて。でも、結局言いたいことはサビ。サビでは、ちゃんとど真ん中の言葉を書きたいなと思っていました。だから、やっぱり聞きどころはサビだと思います。

――キャストの皆さんからの楽曲の感想は届きましたか?
【岸】松田さんがすごく褒めてくださって。面識はなかったんですけど、舞台あいさつで「岸さんがとてもステキな曲を書いてくださった」と言ってくださって。もうそれだけで僕は、泣きそうでしたから。出演されている方々に、そう思ってもらいたくて書いたんです。僕もお芝居をやらせていただくからこそ、オープニングテーマとか、エンディングテーマでテンションが上がったりする。そうなってほしいなと思って作ったので、松田さんが言ってくれたのはめちゃくちゃうれしかったです。

■設定が自身とリンク「もう本当に横田雄二は僕ですよ」 戻りたい瞬間も吐露

――物語は、なかなか筆が進まない脚本家という設定です。曲作りも同じような感覚に陥ることはありますか?
【岸】1行目の歌詞に「本音なのか建前か 筆を執っては何かを捨てる」とあるんですけど、これがまさにそうです。曲を書いたり、歌詞を書いたりすると、人生のどこかがなくなるんです。例えば、すごく好きな女の子がいて、その子との大切な思い出を書いてしまったら、もうそれは自分たちだけの大切な思い出じゃなくなったりするんです。人生の中にあるものを、どんどん出していかなきゃいけないと思うんです。だから脚本家という仕事も書けば書くほど、たぶん人生がなくなっていくんだろうなって。

――劇中でも、現在の横田が過去の横田に経験を積むように助言するシーンがありましたね。
【岸】そうなんです!本当にその通りな気がしていて。「遊びは芸の肥やし」という言葉は今の時代には合っていない、みたいなことありますけど、たぶんすべてを否定するべきじゃないと思っていて。経験があるからこその部分もあると思うんですよね。

――身につまされる話なんですね。
【岸】もう本当に横田雄二は僕ですよ(苦笑)。

――劇中同様にアドバイスとして言いたいことが言えるなら、どんなことを言いたいですか?
【岸】「きのう、夜に牛丼を食うなよ」的なレベルで毎日のように過去に戻りたいです(笑)。

――ターニングポイントになったところでは?
【岸】あるとすれば、LDHという事務所に所属させていただいた時に、ダンスを踊らないという選択をした彼に対して「踊っとけ」と言いたいです。もし、あの時に人生で1番嫌だと思った踊りというものを、今のメンタルで一生懸命できたのであれば、きっと僕は東京ドームに立っていたと思います。その人生が良かったかわからないですけど。だから、そんな人生もきっとあったはずなのに、そこを自分で手放した。しかも、ほんの小さな「ダンスを踊らない」という選択で。そこで踊るという選択をしていた場合の世界と、踊らないという選択は大いに違いました。目の前で「ダンス嫌?」と言われた時に「嫌です」と言ったあの一言で、僕は大きく変わりました。だから、それだけは戻れるなら戻りたいなと思いますし、唯一選択に対して後悔してることだと思います。

――なぜ踊らないという選択を?
【岸】15歳、16歳なので大した理由はなかったと思います。だけど、ただ単に僕はダンスが苦手だったということと、当時憧れていたダンス&ボーカルグループのボーカルは踊らないのがカッコいいと思っていたから、ああなりたい、と。ただ会社の方からしたら未来を作ってるわけで、踊れた方がいいじゃん、と。今ならわかるんですけど、当時はわからなかった。その選択だけは今でも夢に出てきます。たぶん深層心理で後悔しているんだと思います。

――過去に戻った上で現在の横田は、あったかもしれない自分に対して未練はありませんでした。
【岸】すごくよくわかります。たぶん、みんな人それぞれ、過去に対して言いたいことはあるけど、そんなに後悔はしてない気がするんです。それが人間だなと思います。それもあって、いっけいさんのお芝居によって、めちゃくちゃ共感できました。僕も、ただ昔の自分がいたら言えたら言いたいんですよ。

――どんな人にも刺さる映画ですよね。
【岸】絶対にそうだと思います。後悔しないように生きようと思っても無理ですから。それが、また心地いいんですよね。やっちまったことも楽しんでいます。

――きのうの牛丼も、きっとおいしかったでしょうし(笑)。
【岸】おいしかったです(笑)。やっちまったなと今は後悔してますけど。

■今は音楽に集中 17歳の時に40歳で亡くなった父の影響「後悔しないように生きる」

――未来で後悔するかもしれないけど新しく始めたいことはありますか?
【岸】実は僕、ああしたいこうしたいがたくさんありすぎて。それが本来1番やりたいことを遠ざけてるかもしれないっていう気持ちになっていて。来年4月12日に豊洲PITという場所でワンマンライブがあるんです。ソールドアウトを目標にして、たくさんの人に来てもらって楽しんでもらうことだけを考えて生きていきたいなって。今はそう思っています。豊洲PITという無謀なものを乗り越えた先の景色、自分の心を見てみたくなってしまって。たぶん、なんとなく生きようと思えば、生きられるなと思ったんですよ。この世界じゃなくても、サラリーマン経験もあるし。でも、なんとなく生きることが僕には死と同義というか。苦しくないと嫌だなって時に、音楽で1回苦しくなりたいと思って。だから2000人の顔と名前を覚えるチャレンジをやっていて。マジで新宿とか渋谷で、1人でチラシ配ってるんですよ、「岸って言います」って。さっきも駐車場が混んでいて、そわそわしてたら「先いいですよ」と言ってくれた男性がいたので、名刺を渡しました。「岸洋佑と言います。今度、もしよかったらライブに来てください」と。それぐらい、いつでもアンテナを張っています。その気持ちで生きていることが今もとても心地いいです。だから未来のことは考えていないです。

――がっつり音楽に集中しているんですね。
【岸】音楽がこんなに大きな目標になることはなかなかないです。ただ僕、やっぱり「売れたい」と思ったんです。たくさんの人に聴いてもらいたい。悔しくて。31歳になって、20代で売れた人たちと話した時に「目標がない」と言われた時にムカつくと思ったんです。俺は、その景色すら見れてないのに、同じ釜の飯を食べているのも悔しくなっちゃって。俺は絶対に同じ景色見て、さらにみんなと違う全員の名前を覚えるという人としてもっと充実感があるようなことをしたいと思って目標を立ててやっているんです。

――めちゃくちゃポジティブですね。
【岸】「どうせ死ぬんだから」と「人生は暇つぶしだ」という2つの言葉が根底にある。それってめちゃくちゃネガティブな言葉なんです。でも、それをポジティブに捉えると「どうせ死ぬんだから何やったっていいよね」と「人生は暇つぶしなんだったら楽しい方がいいよね」という考えに逆転させる。どネガティブが故のポジティブっていう。たぶん、それが僕の芯ですかね。

――それは誰かに影響されて?
【岸】親父が17歳の時に交通事故で急に死んじゃった。そこですね。人ってすぐ死ぬんだ、と思った。さっきまで元気だったのに…やりたいこともいっぱいあっただろうに40歳で亡くなったので。こういうこともあるんだなって思った時から、いい意味で死が怖くなくなった。「いつでも死は訪れるよね。じゃあその時まで後悔しないように生きてなきゃいけないよね」という気持ちになっちゃったんですよね。

――お父さんが亡くなった年齢に近づいています。
【岸】トラウマで僕、あと9年しか生きられないって勝手に思ってます。たぶん40歳以上は生きられないんだろうなと思ってるから、ちょっと生き急いでる感もあるのかもしれないし、後悔しないようにしてやろう、と。40歳超えちゃったら、もう僕のエクストラステージです!

――話は変わりますがスティンガー/サソリオレンジ役で出演した『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017)が2年後に9周年となります。岸さんが、いろいろな方に知ってもらった作品かなと思います。
【岸】ヤバいね!2年後に9周年ですか。戻りたいけど、ちょっと早すぎるか。コロナ禍があったので感覚として2、3年ズレているんです。僕の中では、まだ5年ぐらいしか経ってないイメージです。だからもう9年かっていう感覚です。たぶん僕が動かないと彼らはやんないので、僕が動きます(笑)。

――聞こえなくなるぐらい高周波になった「カジキイエロー」を待っています。
【岸】(笑)。やっぱり僕は感謝がめちゃくちゃあるので、9周年は絶対に何がなんでも僕が先頭に立って完成させるつもりです。生々しい話ですけど、スポンサーさんを集めないといけない。これを見てる方、よかったらスポンサーになってください!やること多くて大変だな、こりゃ(笑)。豊洲PIT終わったら『キュウレンジャー』9周年かもしれない(笑)。

――最後に改めて『追想ジャーニー リエナクト』の見どころと楽曲の聞きどころを、お伺いできればと思います。
【岸】シンプルに『追想ジャーニー リエナクト』を見て、僕の、私の人生は今後どうしていったらいいんだろうかな、後悔なんてないのかなということを、今一度考えてもらえたらすごくいいなと思います。こういうお芝居を1つ作るのも、役者さんたちだけじゃなくて、スタッフの皆さんも本気でやってるんだよな、という部分も自分の目で見てほしいです。映画館で撮影するとか、普通じゃないじゃない。その大変さや、「すごいなモノ作りって」と、どこかで感じてもらえたらとてもうれしいです。楽曲に関しては、僕もこの曲をたくさんの人に届けられるように頑張るから、いつか生で聞いてもらいたいし、生で聞いた時に、あの映画のこと思い出すなと思ってほしいです。ぜひ末永くかわいがっていただけたらなって思ってます。

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