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連日完売が続く『ぴよりん』、大量生産せず“手作業”を貫く矜持とは「機械でぴよりんが流れる姿を“想像したくない”」

連日大行列の新名古屋名物『ぴよりん』(画像提供:ジェイアール東海フードサービス)
連日大行列の新名古屋名物『ぴよりん』(画像提供:ジェイアール東海フードサービス)
 名古屋駅構内で販売されている、丸くて黄色くて可愛いスイーツ『ぴよりん』。販売店の前に連日できる大行列も、今やすっかりおなじみの光景となった。スイーツに留まらず、コラボグッズの販売や、“ぴよりんvs振動”の実験動画など、話題に事欠かないぴよりん。流行り廃りが早いとされるご当地スイーツの中でも、『ぴよりん』がいっときのブームに終わることなく人気を継続している理由とは。ジェイアール東海フードサービスの開発メンバーに話を聞いた。

【画像】「か…可愛すぎて食べられないよぉ…」大人気だった“みつぱちぴよりん”

 ■発売当初は1日30個ほどの販売…今や“連日の大行列”で買えない人も

 『ぴよりん』とは、名古屋コーチンの卵を使ったプリンを、ババロアで包み、粉末状のスポンジをまとわせたひよこ型のスイーツ。その見た目の可愛さと、ぷるふわの美味しさで、発売開始から13年を経てなお人気は衰え知らず。名古屋駅構内の2つの販売店は連日長蛇の列ができており、今年2月にはJR勝川駅近くにも工房を併設した販売店をオープンした。

 「2011年7月の発売当初の販売個数は1日30個ほど。そこから売上の伸長とともに、製造個数も徐々に増やしていったのですが、それでも『買えなかった』という声が多かったことから、従前の倍量が製造できる新工房の開設に至りました。ただ製造方法は前と変わらず、1ぴよ1ぴよ手作りにこだわっています」(ジェイアール東海フードサービス株式会社・越智謙吾さん/以下同)

 そんな大人気の『ぴよりん』には、実は"兄貴分"とも言える存在がいた。

 「もともと弊社では、『シャチボン』というシャチホコ型のシュークリームを販売していました。こちらも人気ではあったのですが、販売店の閉店に伴い販売休止に。そこで次なるスイーツとして開発されたのが、『ぴよりん』でした。幅広い世代に愛されるように開発テーマを『丸くて可愛らしいもの』としたところ、ひよこというアイデアが上がったんです」

 前述の通り、販売開始当初は知る人ぞ知るスイーツだった『ぴよりん』。そのブレイクのきっかけは2度あったという。

 「2013年に公式Facebookを立ち上げてから、じわじわ口コミで広がっていきました。急激に伸び始めたのは、2018年頃。Instagramに『#ぴよりんチャレンジ』(後述)というハッシュタグが、自然発生的に生まれたんです。さらに2021年6月29日、棋士の藤井聡太さんが、対局中のおやつに『ぴよりんアイス』を選んでくださったことが決定打になりましたね。公式サイトにアクセスが殺到してサーバダウンし、メディアの取材依頼も急増。あの頃から今のような連日の大行列ができるようになりました」

■ 「繊細で崩れやすい」特徴は課題でもあり、“魅力”?

 『ぴよりん』の特徴の1つは、繊細で崩れやすいこと。それを逆手にとって「ぴよりんの可愛い姿を崩さずに自宅まで持ち帰れたら成功!」という楽しみ方が生まれた。それがSNSのムーブメントにもなっている「#ぴよりんチャレンジ」だ。

 「もともと『ぴよりん』は、イートインを想定して開発されたスイーツでした。ところが意外にテイクアウト需要が高かったことから、『崩れやすい』という課題が浮き彫りになったんです。とはいえ、カチカチにしてしまったら『ぴよりん』じゃない。試行錯誤した結果、2013年に『ぴよりん』の中身を、ムースからババロアに改良しました。初期から材料や製法を変えたのは、この時だけです」

 ぷるふわ食感が魅力の『ぴよりん』は、電車の揺れなど振動に弱い。『ぴよりん公式YouTube』には、日立製作所・研究開発グループの有志の方々による振動実験の動画も上がっている。鉄道車両部品などの開発に使用する装置の振動に、ぷるぷると必死に耐える『ぴよりん』の姿がなんともいじらしい。

 「今後もテイクアウト用包材を改善するなど、なるべく可愛いまま持ち帰っていただけるよう取り組んでいきたいと考えています。ただ、滑らかな口溶けやぷるふわの食感といった、ぴよりん本来の魅力はこれからも譲れないところです」

■機械でぴよりんが流れる姿を“想像したくない”、“手作業”を貫く矜持

 この2月に製造個数を倍増したものの、連日完売が続く『ぴよりん』。1ぴよ1ぴよ手作業で作っているため「大量生産は難しい」とのことだが、たとえば機械化するなどの、量産体制は取れないのだろうか。

 「社内からも一部そうした意見はありますが、手作りだからこそ1ぴよずつ表情が異なるのも、『ぴよりん』の愛されポイントの1つになっています。判で押したような『ぴよりん』が機械で流れてくるのは、“開発メンバーとしても想像したくない”というのが正直なところ。買えない方がいるのはとても申し訳ないのですが、今後も手作りにはこだわりたいですね」

 ちなみにプレーンの『ぴよりん』は、オンライン予約システムの「スマートぴよ約」で確実にゲットできるが、季節限定やコラボ商品は即完必至。中でも、蜂のコスプレをした"みつばちぴよりん"は、その可愛らしさからグッズも大人気だったようだ。

 「これまで多数の限定『ぴよりん』が誕生してきました。流行は特に意識せず、とにかく可愛い厳守で、思わず笑顔になってしまうような、守ってあげたくなるようなデザインを工房の作り手たちが考えてくれています」

 ブームを超えて、名古屋の新名物スイーツとしてポジションを築きつつあるぴよりん。しかし越智さんは「まだまだです」と言う。

 「13年で名物を名乗るのは早いです。ただ流行り廃りの激しいご当地スイーツの中でも、ここまで人気を継続してこられたのは、発売から7~8年の"ぴよりん下積み時代"に焦ることなく、またブレイクしても当初からのポリシーを曲げることなくやってきたからだと思っています。いっときのブームで終わらない、“真の名古屋名物”を目指し、近年は地元企業とのコラボにも力を入れています。目標は『名古屋 黄色』で画像検索したらトップに出てくること。今は名古屋市営地下鉄・東山線さんの車両がずらっと並びますし、まだまだこれからですね」

(取材・文/児玉澄子)



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