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調査報告書、近く公表へ 施工不良の八郎山トンネル、和歌山県

八郎山トンネル施工不良問題の調査報告書を取りまとめたことについて話す技術調査委員会の大西有三委員長(左)ら=5月31日、和歌山市で
八郎山トンネル施工不良問題の調査報告書を取りまとめたことについて話す技術調査委員会の大西有三委員長(左)ら=5月31日、和歌山市で
 大規模なずさん工事が発覚した和歌山県道長井古座線の八郎山トンネル(串本町―那智勝浦町、711メートル)について、県は5月31日、施工不良の原因や再発防止策などの「調査報告書」を取りまとめた。原因について業者のミスや倫理観の欠如などを挙げ、県も監督体制の不備があったとしている。6月中にも県のホームページで公開したいという。

 トンネルは、県から請け負った淺川組(和歌山市)と堀組(田辺市)の共同企業体が施工。昨年12月に供用開始の予定だったが、トンネルのほとんどで、覆工コンクリート(内壁)が薄かったり、山の圧力を支えるアーチ型の鋼材「鋼アーチ支保工」約700本のほぼ全てがずれて設置されたりしていることなどが発覚。正常に施工したように見せかけようと、書類を改ざんしていたことも分かった。

 有識者による県の「技術検討委員会」が、全国的にも異例となる、ほぼ全面的なやり直しの方針を決め、淺川組が自社負担で昨年12月から始めている。現在、内壁の撤去がほぼ終わり、「鋼アーチ支保工」の付け替えをしていくといい、来年12月ごろの工事完了を目指している。

 報告書では施工不良の原因について、業者による測量ミスや掘削管理の不備、品質確保に対する技量不足、施工不良を認めながら工事を進めたという倫理観の欠如などを挙げている。県についても監督体制に不備があり、進行状況に応じた「段階確認」を適切に実施していなかったことや、監督員の技術不足などを示した。対策工法や再発防止策などもまとめている。

 31日の会議は非公開で、終了後に会見した県の福本仁志県土整備部長は前例がないような規模の施工不良だったとした上で「想定外の事があったとか、特殊な困難さがあったとかではないので、本来やるべきことをきちんとやればこういうことにならなかった」と述べた。検討委委員長の大西有三・京都大学名誉教授は「簡単に言えば設計図通りに造られていなかった。技量不足であり、記録も残していなかった」と指摘。検査する側の県に対しては「(職員の)技術を向上し、このようなことが二度と起こらないように対応してほしい」と求めた。

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