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漁協への不正支出5899万円 田辺市が最終報告書

 和歌山南漁協(本所・和歌山県田辺市)の補助金不正受給問題などを調査した田辺市は9日、水産事業で1999~2017年度の19年間に約5899万円の不正支出があったと最終報告を発表した。漁協の水増し請求を見抜けなかっただけでなく、市職員が虚偽の報告書を作成したケースもあった。ずさんな公金の取り扱いが浮き彫りになった。

 白浜町で18年4月に発覚した和歌山南漁協による補助金の不正受給を受け、市が同年6月から調査を開始。問題が疑われた延べ278事業の関係書類の突き合わせや関係者の聞き取りをした。調査対象の書類は計約27万8千点。

 市の報告書によると、不正な支出があったのは市直営の「イセエビ放流事業」や海のごみの回収に対し補助する「海面環境保全事業」、漁協が主体の放流や販路拡大に対する補助事業など185事業。

 イセエビ放流事業は、市が漁協と取り組んでいる。漁協は市が依頼した稚エビを十分準備していないのに、要求量を放流したように装って代金を請求。市も職員が放流現場に立ち会いながら、数量の確認を怠った。

 海面環境保全事業は、漁業者が操業中に海から回収したごみの量に応じ、市が漁協らでつくる「市水産振興会」に補助金を支給する。振興会事務局の市水産課がごみの量を水増しした報告書を作成し、毎年補助事業費の全額分を支出した。

 漁協への補助事業では、漁協が事業費を水増しして記載したり、架空の領収書を作成するなどして、市に過大な支出をさせた。一部は市職員が漁協と協力して虚偽の資料を作成したり、提出書類が実際と異なることを黙認したりして支出した。

 漁協が不正に受け取った額は約5482万円で、市は弁護士と協議し、賠償金の利息に当たる遅延損害金も含め、返還を求めるとしている。

 市職員については関与の度合いなどを精査しているところで、結果を踏まえて厳正に処分するとしている。市長は来年1月から2カ月、副市長2人は1カ月、減給10分の1にする。市は開会中の12月市議会に条例改正案を提出する。

 市ではこれまでも森林保全の補助金や生活保護費の支出などで、ずさんな公金の扱いが問題になってきた。弁護士など有識者による検証委員会(仮称)を設置して補助金事務を見直したいという。

■「信頼回復に努める」 真砂市長

 真砂充敏市長は市議会への報告後に取材に応じ「公金取り扱いの厳格化に取り組んでいる最中に水産課の一部事業で不適切な支出が長年続いていたことが明らかになったのは痛恨の極み。市民、議員の皆さんに心からおわび申し上げる。一日も早い市政、水産行政に対する市民の信頼回復に取り組みたい」と話した。

■「誠実に対応したい」 漁協の組合長

 和歌山南漁協の三栖敏一組合長は9日、取材に「まだ市から報告を頂いていないのでコメントはしかねるが、誠実に対応していきたい」と語った。想定される市からの返還請求については「弁護士らと相談して取り組み、信頼関係を再構築したい」と話した。

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