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児童精神科医が足りない 「現状知って」保護者ら充実求め署名活動、和歌山県の紀南地方

和歌山県田辺市の特別支援学級在籍者数の推移
和歌山県田辺市の特別支援学級在籍者数の推移
 発達障害や心の問題を抱えた子どもを診察する「児童精神科医」が、和歌山県紀南地方で不足している。少子化でも発達障害や不登校は増加しており、児童精神科のニーズは高まっている。発達障害児の保護者らは地域の現状を訴えるとともに、医療体制の充実を求め、署名活動に乗り出した。


 児童精神科医は幼児期の発達診断、障害認定、各種サービスへの診断書の添付、教育機関への意見書の記載など、子どもや家族が必要な支援を受けるために重要な役割を担っている。青少年のメンタルヘルスケアでの重要性も増している。

 紀南では南紀医療福祉センター(上富田町岩田)に専門医2人が常勤していた。ところが、昨年12月末に1人が病休となり、復帰のめどが立っていない。現在は週1回非常勤医1人の派遣を受けて対応している。

 署名活動をしている南紀はまゆう支援学校保護者有志代表の西脇潤さんは「継続して障害特性を理解してくれる主治医が地元にいることは、親にとって非常に重要。これまで受診以外でもさまざまな相談に乗ってもらってきた」と話す。

 「2人体制でも定期受診の予約が取れるのは半年に1回程度。医師不足が続けば、必要な支援を受けることができないまま成長する児童が増加し、将来ひきこもりなどの二次障害につながる可能性もある」と心配する。

 他院に移る場合は、有田川町や和歌山市まで通院することになり、負担が増す。

■増える発達障害

 医師不足はひとごとではない。学習面や行動面に困難さがあるなど、発達障害の可能性のある小中学生は推計8・8%(2022年、文部科学省調査)。11人に1人程度在籍している計算になる。

 田辺市教育委員会学校教育課によると、特別支援学級の在籍者数は、小中学校とも増加傾向にある。小学校は18年度の124人が23年度には176人、中学校でも49人が62人に増えた。

 通常学級に在籍したまま必要に応じて別教室などで授業を受ける「通級指導」の利用は、18年度の70人が23年度には87人に増えている。22年度は89人いた。

 南紀はまゆう支援学校の23年度在籍者数は117人で、「小学部」32人、「中学部」35人、「高等部」50人となっている(人数はいずれも4月1日現在)。

 発達障害の子が増えている背景の一つには、05年の発達障害者支援法施行で、発達障害に対する認知が広がったことがある。専門医療機関の受診が珍しくなくなったという。

 西脇さんは「児童精神科の重要性を広く知ってもらうことで、応援の輪を広げたい。子どもの未来は地域の未来。障害の有無にかかわらず、安心して暮らせる社会を実現したい」と協力を呼びかけている。

 保護者有志は「児童精神科医不足解消についての嘆願書」を署名とともに、3月中に県に提出予定。問い合わせは西脇さん(090・8654・9498)へ。

■寛容な地域づくりを 保護者の願い

 田辺市に住む30代女性は、自閉症スペクトラム症の長男(7)を1人で育てている。長男には言葉の遅れがあり、指さしをしなかったり、こだわりが強かったりした。3歳頃に診断を受けた。

 長男は児童発達支援センターへの通所を経て、保育園に通園。障害児に対応する加配保育士がおり、楽しく通うことができた。現在は特別支援学校に通学している。児童精神科医には、関係機関との連携や学校選択の助言で支えられた。

 それでも日常は買い物先でも公園でもトラブルの連続。子育てに迷うことは多い。「聴覚過敏の子は、外出中に苦手な音を聞いてしまうと危険な状況でも走り出す。パニックは時と場所を選ばず起きる」。いつもヒヤヒヤを抱える保護者は、張り詰めた表情をしていることが多いという。

 女性は発達障害児の保護者を中心としたサークルを開催している。「みんな子どもの特性と向き合いながら、ありのままを受け止めようと手探りで頑張っている」。ところが、サークルの一歩外に出ると理解は十分ではないと感じている。

 「困った行動をする子どもがいても、保護者が様子を見ながらクールダウンさせていることもある。決してほったらかしにしているわけではない。おおらかに見守ってもらえればうれしい。福祉の支援や医療の充実も大切だが、寛容さを持って子どもを受け入れられる地域づくりも重要」と話している。

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