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伝説の地に新たな魅力 弘法大師生誕1250年で串本「橋杭岩」

橋杭岩の根元で、地層にマグマが入り込んだ境目を指さす福村成哉さん(和歌山県串本町くじの川で)
橋杭岩の根元で、地層にマグマが入り込んだ境目を指さす福村成哉さん(和歌山県串本町くじの川で)
レストラン「空海」のスタッフ。(左から)沼倉潮さん、深海秀哲さん、沼倉由浩さん=和歌山県串本町くじの川で
レストラン「空海」のスタッフ。(左から)沼倉潮さん、深海秀哲さん、沼倉由浩さん=和歌山県串本町くじの川で
太平洋を望む半露天風呂の温泉「弘法湯」(和歌山県串本町姫で)
太平洋を望む半露天風呂の温泉「弘法湯」(和歌山県串本町姫で)
 和歌山県串本町の名勝「橋杭岩」。850メートルにわたり並ぶ大小40余りの奇岩は、弘法大師(空海)が立てたとの伝説が残る。今年は弘法大師生誕1250年で、15日が誕生日。伝説の地で新たに生まれている魅力を紹介する。

■地質、災害学べる場

 橋杭岩は、南紀熊野ジオパークの見どころの一つ。地質や災害について学ぶ教育旅行でも注目されている。

 橋杭岩ができた経緯はこうだ。海の中にあった地層にマグマが細長く入り込み、冷えて固まる。海底が隆起して、地層が地上に現れる。波の浸食を受け、軟らかい泥岩が早く削られ、硬い流紋岩が直線状に残って橋杭岩となった。

 南紀熊野ジオパークセンターの福村成哉副主査研究員によると、マグマが地層に入り込んだのは約1500万年前。その痕跡を今も見ることができる。潮が引いている時間帯、橋杭岩の根元に近づくと、黒い部分が観察できる。地層(泥岩)にマグマが入り込んだ境目だ。

 橋杭岩の周辺には千個以上の小さな岩が点在している。これらは橋杭岩の「かけら」。巨大地震で発生した大津波によって海岸に散らばった。裏付けとなるのが、岩の表面に残る海洋生物「ヤッコカンザシ」の痕跡。基本的に動かない生物が、本来生息する潮間帯から離れていることからも明らかという。

 福村さんは「遠くから眺めるだけでなく、近づいてみると他にもいろいろな発見がある。いつもと違う橋杭岩の魅力に触れてみて」と呼びかけている。

■地元食材生かした料理

 橋杭岩前にあるレストランはその名も「空海」。「伝説の地で開業するのだから」とオーナーの沼倉潮さん(53)が決めた。沼倉さんの地元、串本町和深地区にも弘法大師による巨大魚の伝説があり、空海は身近な存在だという。

 オープンは2021年4月。前年の11月11日、コロナ禍真っただ中に沼倉さんは高野山を参拝し、「名前を貸してください」とお願いしてきた。「覚悟を伝えると、『頑張れよ』と言ってくれた」と笑う。

 「空海」では地元産の食材による和洋さまざまな料理を提供する。料理長の深海秀哲さん(52)は、大阪のホテルでフレンチの修業を積み、白浜町や那智勝浦町でも勤務。地元食材を生かした料理を磨いてきた。

 「魚介類の料理はぜひ味わってほしい。地元の漁師から仕入れるので新鮮。長年、修業してきた肉料理も自信がある」と勧める。肉は地元ブランドの熊野牛などを使用している。

 フロアではオーナーのおいでマネジャーの沼倉由浩さん(31)が接客を担う。深海さんはオーナーの幼なじみ。地元トリオがグルメで新しい伝説を生み出そうとしている。

 営業は午前11時~午後2時半、午後5時~9時。木曜定休。

■海眺め〝湯ったり〟

 橋杭岩のすぐそばにある温泉「弘法湯」は、22年秋にリニューアルオープンした。太平洋を望む絶景の半露天風呂があり、貸し切りでゆったり利用できる。

 運営するのは串本町樫野のアウトドア会社「アウトドア トリップ」(南畑義明代表)。旧施設を大幅に改修し、雄大な景色を楽しめるよう半露天風呂にした。また9・5畳の脱衣所兼休憩室を設け、夜間は素泊まりの宿に変身する。宿泊すれば、気象条件次第で星空や朝日を眺めながらの入浴も楽しめる。

 温泉は単純硫黄泉でリウマチや神経痛、疲労回復などの効能があるという。弘法大師が、病で苦しむ村人にこの湯の存在を教え、人々を救ったという伝説が残る。

 営業は貸し切り温泉が午前10時~午後5時。定休水、木曜。受け付けは近くにある体験&おみやげショップ「橋杭ICO(イコ)」で。

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