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漂着物を幻想的に 串本で中里さん写真展

幻灯機を使うなどして表現した作品を展示している中里和人さん(和歌山県串本町田並で)
幻灯機を使うなどして表現した作品を展示している中里和人さん(和歌山県串本町田並で)
 和歌山県串本町田並のJR田並駅前にある田並劇場で、東京造形大学(東京都)の教授を務める写真家・中里和人さん(65)=千葉県市川市=の写真展「夜の海、龍宮の光」が開かれている。「生命の再生と循環」を願い、海辺で集めた人工的な漂着物を幻灯機に入れ、壁に投影した光を撮影した作品などを展示。入場無料。29日までの月、水、土、日曜の午後1時~5時に開場している。

 中里さんは三重県多気町出身で法政大学卒業後、写真家・北井一夫さんに師事。その後、フリーカメラマンとして活動し、日本の各地を訪れ、地形的な特徴や人間の手の加わった社会的な景観を読み込みながら撮影に取り組んでいるという。

 中里さんは県内に何度も撮影に訪れているが、写真展の開催は今回初めて。20年近く前に東京都墨田区であったアートプロジェクトをきっかけに田並劇場の林澄蓮代表と交流を重ねており、今回の写真展は、今年3月に出した写真集「Hikari no Hyochaku」の出版記念も兼ねて開催。潮流という自然のエネルギーによって海辺に流れ着いた人工の漂流物を改良した幻灯機に入れ、海辺の壁面に投影させた光を撮影したもので「人間の暮らしの中で見向きもされなくなったごみの中から、見えないイメージやエネルギーを再生、蘇生させたい」との思いで取り組んでいるという。

 会場にはこの写真集のほか、自身の原風景という「黒潮」をテーマに、房総から伊豆、紀伊半島へと黒潮をさかのぼるように各地を訪ねて夜の風景を撮影した写真集「龍宮」などから計21点を展示している。

 中里さんは「昔から人は潮流や土地といった自然の力を読み込みながら、二人三脚で生きてきた。今回、黒潮の流れのど真ん中とも言える串本町で写真展を開催できて大変光栄。自然と人との関係を考えるきっかけをいろんな切り口で撮影しているので、皆さんがそういうことを感じる一助になればうれしい」と話している。

 29日には関連イベントとして「写真集出版記念幻燈会『龍宮』から『Hikari no Hyochaku』へ」を開催。時間は午後6時からで、入場料は1500円。申し込みは不要。

 問い合わせは田並劇場(0735・66・0557)へ。

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