和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年05月23日(金)

米不足で仕入れ困難 供給悪化、米穀店が苦境、和歌山県紀南

以前より品数が減っているという米穀店の棚(和歌山県田辺市で)
以前より品数が減っているという米穀店の棚(和歌山県田辺市で)
 米の不足や価格高騰により、米穀店が苦境にあえいでいる。安定した米の仕入れが難しくなっているためで、和歌山県の田辺市内では今後の状況によっては休業する米穀店も出てきそうだ。背景には全国的な米農家の減少も考えられ、米の供給悪化は深刻だ。


 米不足は昨年夏から顕著となり、小売価格は右肩上がりで現在は1年前の2倍ほどになっている。

 田辺市湊の米穀店は主にJAから仕入れており、「2024年度産は週ごとに価格が上がってきているが、それ以上に米自体がないのでどうしようもない。政府は備蓄品を放出しているが、入ってきていない」と嘆く。今後、新米が出るまで入ってこないとなれば「店を一時的に休業することになるかもしれない」と表情を曇らせる。

 主に卸売業者から仕入れる同市上屋敷1丁目の米穀店は「今は米の入荷が不安定で、いろいろな種類の米をそろえることができない」という。24年度産は卸売価格が高く、「販売の際に価格転嫁したいがそれができず、利益を削っている。新米が出た後もこのような状況が続くと一層厳しくなる」と声は沈みがちだ。

 新宮市では、老舗の米穀店が「米不足に対応できない」として4月末で閉店した。紀南でも近年、米穀店は減りつつあるが、今回の米不足による影響が経営悪化を招かないか心配される。

■農家の倒産・休廃業増加
24年は全国で89件

 一方、米の高騰とは裏腹に、全国では米農家の倒産・休廃業が続いている。東京商工リサーチ和歌山支店によると、1年間の倒産・休廃業件数は19~22年では60件前後で推移していたが、23年は83件に増え、24年は89件で、統計を開始した13年以降で最多となった。要因は生産コストの上昇や後継者不足とみられる。

 同支店は「農家が減ることは関連する産業に影響する。飲食業の倒産や休廃業も増えている」としている。