和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年02月28日(金)

白浜の記念館で企画展 熊楠と紀南の植物研究者、和歌山

展示されている南方熊楠が宇井縫蔵に送った長文の書簡(和歌山県白浜町で)
展示されている南方熊楠が宇井縫蔵に送った長文の書簡(和歌山県白浜町で)
 和歌山県田辺市で後半生を過ごした博物学者、南方熊楠(1867~1941)と関わりのあった紀南の植物研究者らを紹介する企画展が2月1日から、白浜町の南方熊楠記念館で始まる。書簡や植物標本の写真パネルなど23点を展示する。3月2日まで。

 企画展では、上富田町出身の植物研究者、宇井縫蔵(1878~1946)に熊楠が送った長文の書簡を展示。書簡で熊楠は、宇井の著書「紀州植物誌」を絶賛し、本に掲載されていない植物の植生地などについて書いている。宇井は、熊楠に高知県出身の植物分類学者、牧野富太郎(1862~1957)を紹介した人物として知られている。

 また、上富田町出身の植物研究者、樫山嘉一(1888~1963)が、同定依頼のため熊楠に渡した田中神社(上富田町)の「オカフジ」の標本写真も展示。樫山は県内でハルザキヤツシロラン(ラン科)を見つけた人物。後に熊楠は書簡の中で「八上神社のヤツシロランが絶滅したのは、声高に生えている場所を言いふらすからだ」と苦言を呈している。

 熊楠の植物研究の元になったのは、幼少期に読んだ「本草学」や、留学したロンドンでの植物学修得にあった。ロンドンから帰国した後、熊野の山々を歩いて植物採集をした。

 同じ頃、牧野も和歌山県をはじめ全国各地で植物採集会を開き、アマチュア採集者から植物標本を集めていた。

 記念館の三村宜敬学芸員(42)によると、熊楠と牧野は互いを知っており、会おうと思えば会える場所にいたことも何度かあったが、会わなかった。熊楠は牧野を「人の嫌なことをいう人物」、牧野は熊楠を「人文学者で植物学者ではない」と評している。三村学芸員は「2人は会うことを避けていたと思われる」と話している。

 なお、2月16日と3月2日には、記念館で午後2時から約20分間、三村学芸員によるギャラリートークがある。参加申し込み不要。

 開館時間は午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)。木曜は休館。入館料は高校生以上600円、小中学生300円、幼児無料。

 問い合わせは記念館(0739・42・2872)へ。