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2025年01月03日(金)

2024年話題の映画総まとめ『あの花』『変な家』『コナン』『あぶ刑事』『キングダム』『ラストマイル』『推しの子』など

2024年興行収入ランキング1位は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の158億円(C)2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
2024年興行収入ランキング1位は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の158億円(C)2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
 2024年もきょうで終わり。今年もさまざまな映画が公開された。象徴的だったヒット作を振り返る。

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■『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』興行収入158億円の大ヒット、舞台となった函館市に注目

 日本人の年間の映画鑑賞本数が1~2本程度とされている中、その1本を確実にとらえていると思われるのが、アニメ『名探偵コナン』の劇場版シリーズだ。4月から5月に公開し続け(新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年のみ公開なし)、観客動員&興行収入において右肩上がりの成長を続けてきた。2023年、ついに26作目『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』で初めて100億円の大台に乗せ、興行収入138.8億円(興行通信社調べ、2024年12月22日時点)を記録。27作目となる『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』では、158億円(興行通信社調べ、2024年12月22日時点)でシリーズ史上最高記録を更新した。

 『~ 100万ドルの五稜星』においては、メインキャラクターの1人でもある怪盗キッドによって「試写会への招待状とフィルムが盗まれた」という体(てい)で、劇場版『名探偵コナン』史上初めて公開前の事前試写会を行わない異例の対応が取られた。『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)、『君たちはどう生きるか』が事前に試写会を一切行わず、大ヒットしたことも記憶に新しいが、『~ 100万ドルの五稜星』は、映画公開初日の午前0時から一部映画館で初回上映を行い、いち早く見たいファンが殺到。公開初日の興行収入は前作比約112%となる9億6000万円を記録した。

 コナン、キッド、敵キャラともに、先祖からの呪縛と葛藤が描かれた本作は、好きなキャラをきっかけにコナンの世界にはまっていく推し活客にとっても魅力的な要素がちりばめられており、コアファンのリピーター化を促した。そんなコアファンによる口コミを聞きつけたライト層も呼び込み、北海道での土方歳三をモチーフにしてミステリー・歴史好きにも訴求。映画の舞台となった北海道函館市では、ゆかりの場所を巡るスタンプラリーの台紙を兼ねた「函館まち巡りマップ」を配布し、ファンによる聖地巡礼も活発化。全国1000市区町村を対象に自治体の魅力度を測る今年の「地域ブランド調査」(ブランド総合研究所調べ)では、北海道函館市が5年ぶりに1位に返り咲く(同調査で1位になるのは通算で7回目)要因の一つになったとも言われている。

 2025年も劇場版28作目『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の公開(4月18日)が決まっており、長野県の雪山を舞台に、コナン、毛利小五郎、隻眼の刑事・大和敢助などを中心としたストーリーが描かれるようだ。

■『キングダム 大将軍の帰還』シリーズ最大のヒットに

 原泰久氏による漫画『キングダム』を俳優の山崎賢人(※崎=たつさき)主演で映画化した4作目『キングダム 大将軍の帰還』が7月12日に公開され、実写映画シリーズの集大成にしてシリーズ最大のヒットとなる興行収入80.3億円(東宝発表、2024年12月23日時点)を達成。

 佐藤信介が監督を務め、原作者の原氏が自ら脚本に携わり、戦災孤児だった信(山崎)の成長と、秦の大将軍・王騎(大沢たかお)の死までを描く実写映画プロジェクトは、2000年以降シリーズ化された邦画実写作品で、1作目から4作連続で50億円超え(興行通信社調べ)という史上初の偉業で映画史にその名を刻んだ。

■『ラストマイル』シェアードユニバースという新たな鉱脈

 ドラマ『アンナチュラル』(2018年)と『MIU404』(2020年)の世界線(ユニバース)を共有(シェアード)した映画『ラストマイル』が、59.1億円の大ヒット(東宝発表、2024年12月22日時点、122日間成績、上映中)。

 それぞれ大ヒットした『アンナチュラル』『MIU404』を手がけた、監督=塚原あゆ子×脚本=野木亜紀子×プロデューサー=新井順子のタッグによる完全オリジナル。主演は満島ひかり、共演は岡田将生、ディーン・フジオカ、阿部サダヲほか。さらに、『アンナチュラル』から石原さとみ、井浦新、『MIU404』から綾野剛、星野源らが出演している。

 『アンナチュラル』や『MIU404』の続編を待ち望んでいたファンがを取り込みつつ、自由度の高いオリジナル脚本で、より多くの人がシェアできるような社会派エンターテインメントをつくり上げ、単なる人気ドラマの続編映画以上の反響を呼んだ。

■『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『変な家』ヒットの共通点

 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は「泣ける!」、『変な家』は「怖すぎる」と、ともにSNSによって若い世代を中心に爆発的ブームを起こした。映画のヒットとともに、原作小説も売り上げを伸ばした点でも共通していた。

 映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、TikTokで話題となり、「初めて本を読んで泣いた」「号泣してやばい」「同じ世代の人たちに読んでほしい」など、10代を中心に人気となった汐見夏衛氏による原作小説(スターツ出版文庫)を、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年後期)をはじめ主演作が相次ぐ福原遥、同連続テレビ小説『ブギウギ』(2023年後期)に出演していた水上恒司のダブル主演で映画化した作品。現代の女子高生と、戦時中の特攻隊員との時を超えたラブストーリーが、興行収入45.2億円(興行通信社調べ、2024年12月22日時点)のヒットとなった。

 2023年12月8日の公開直後からSNSでは「人生で一番泣いた映画」「名作すぎてどうしよう」「全人類に観てほしい」などと、感想が多数投稿され、「泣ける」という口コミが広がった。TikTokでは、映画公式アカウントの投稿を含め、さまざまなユーザーが『あの花』関連の動画を投稿。各動画にコメントがつき、そのコメントに「いいね」やさらにコメントがついて…と、プチバズりが続出。SNSでの「泣ける」という口コミで良さが伝わり、実際に「泣けた」ことで次の口コミにつながって広がり、「泣ける」作品を求める客層をしっかりつかんだ。

 原作小説も映画化発表時点(2023年5月)ではシリーズ累計発行部数50万部だったが、発表後に急伸。映画公開後はさらに売り上げを伸ばし、出版元は2024年1月10日にシリーズ累計発行部数100万部突破して、102万部となったことを発表した。

 一方、映画『変な家』は、白い仮面をかぶった謎のクリエイター・雨穴(うけつ)氏によるYouTube動画から始まり、その前身である同タイトルのウェブメディア記事を元に書籍化、漫画化もされてきた、一軒家の変な間取りにまつわるホラーミステリーを、間宮祥太朗、佐藤二朗らの出演で映画化。興行収入50.7億円(東宝発表、2024年12月23日時点)の大ヒットとなった。

 “ゾクッとミステリー”という宣伝文句だけで内容をほとんど明かさず、完成披露試写会も行わずに初日を迎えたところ、SNSでは賛否両論ありながらも、「怖すぎて退出」「怖すぎて初めて途中退場した」といった感想が多数投稿された。TikTokでは「#変な家」がついた動画が多数投稿され、「怖すぎる」という口コミが広がり、メインターゲットのティーンや若者世代が「怖いもの見たさ」で劇場に足を運んだ。

 さらに、『変な家』には『犬神家の一族』や『八つ墓村』などの名作ホラーを彷彿させる要素もあり、主演の間宮や佐藤、共演の川栄李奈らに加え、根岸季衣、高嶋政伸(※高=はしごだか)、斉藤由貴、石坂浩二らベテラン俳優たちの怪演もあり、元になったYouTube動画を知らない映画ファンやホラーファンの支持を獲得することにも成功。

 雨穴氏の小説シリーズも今年最大のヒット作となった。『変な家2 ~11の間取り図~』(飛鳥新社/2023年12月15日発売)は、今年の『オリコン年間“本”ランキング』の単行本などの一般書籍部門「BOOKランキング」で、期間内(※)売上74.4万部で1位を獲得。また「文庫ランキング」においても、『変な家 文庫版』が期間内(※)売上58.1万部で首位となり、2冠を達成した(※実質集計期間:2023年11月20日~2024年11月17日)。

■ゴジラ、『ゴジラ-1.0』第96回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞、ハリウッド版も大ヒット

 2023年11月3日に公開された山崎貴監督・脚本・VFXの『ゴジラ-1.0』。ゴジラ誕生(1954年)から70周年を記念した本作は、今年3月に行われた「第96回アカデミー賞」の授賞式で、視覚効果賞を受賞。これまで同賞をアジア映画が受賞したことはなく、史上初の快挙となった。ハリウッド映画に比べて低予算の中でも、山崎監督のもと、制作会社「白組」の確かな技術と知恵、チームワークの良さで最高の成果を上げられることを証明してみせた。最終的に日本での興行収入が約75億円(興行通信社調べ、2024年12月22日時点)を記録するヒットとなった。

 一方、4月には『ゴジラ×コング 新たなる帝国』が公開され、日本での興行収入17.4億円(東宝発表、2024年12月23日時点)、世界興行収入では6位に入る5億7175万ドル(Box Office Mojo調べ、12月10日時点)の大ヒットに。「ゴジラ」という「知的財産(IP)」の強さ、可能性を国内外に知らしめた。24年11月には、山崎監督の脚本、VFXによる『ゴジラ』の新作映画の製作決定も発表された。

■スタジオジブリ、『君たちはどう生きるか』第96回アカデミー賞長編アニメーション賞受賞&カンヌ名誉パルムドール

 2023年7月14日に公開されたスタジオジブリ・宮崎駿(※崎=たつさき)監督の10年ぶりの長編映画『君たちはどう生きるか』が、「第96回アカデミー賞」長編アニメーション賞を受賞。『千と千尋の神隠し』以来21年ぶり2度目の受賞という快挙を成し遂げた。日本での興行収入は94億円(興行通信社調べ、2024年12月22日時点)。中国でも大ヒットし、世界興収は1.7 億ドル超に上っている。

 5月には、フランスで開催される世界三大映画祭の一つ、「第77回カンヌ国際映画祭」で映画界への多大な貢献をたたえる「名誉パルムドール」をスタジオジブリが受賞。アニメーションスタジオに同賞が贈られるのは初めての快挙となった。授賞式にはジブリを代表して、宮崎吾朗氏が登壇した。

■『あぶない刑事』『室井慎次』80年代・90年代の刑事ドラマが“復活”ヒット

 5月には、70代になった俳優の舘ひろし、柴田恭兵が主演する映画『帰ってきた あぶない刑事』が公開。10月・11月には、60代の柳葉敏郎が主演する『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』が公開された。

 『帰ってきた あぶない刑事』は、1986年にドラマ『あぶない刑事』が放送されてから38年、劇場版の前作『さらば あぶない刑事』(2016年)から8年、昭和・平成・令和、3つの時代にまたがる作品となった。タカこと鷹山敏樹(舘)とユージこと大下勇次(柴田)の破天荒な活躍を描き、浅野温子、仲村トオルといったドラマからのメンバーに加え、土屋太鳳ら新キャストが出演。前作の興行収入16億2500万円(興行通信社調べ)の記録を超えるヒットとなった。

 一方、『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』は、1997年1月期に放送された連続ドラマ『踊る大捜査線』の最終回で、所轄の刑事・青島(織田裕二)と、キャリア官僚・室井(柳葉)が交わした“約束”から27年の時を経て、“青島との約束”を果たせなかったことを悔やみ、警察を辞めて故郷・秋田に帰った室井の“最後”の物語を描いている。

 「踊る」シリーズとしては、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年9月7日公開/興行収入59.7億円/動員471万人)以来、12年ぶりの新作。興行収入は『~敗れざる者』は18.5億円、『~生き続ける者』は15.9億円(いずれも東宝発表、2024年12月23日時点、上映中)で、シリーズ累計で500億円を突破した。さらに、『踊る大捜査線』の最新作となる『踊る大捜査線 N.E.W.』の製作、2026年に公開となることも発表された。

■動画配信サービスと映画の連動企画『沈黙の艦隊』『【推しの子】』

 映画やドラマの鑑賞スタイルとしてすっかり日常生活に定着した動画配信サービス。2024年は映画と各サービスが展開するドラマシリーズの連動企画も注目を集めた。

 2月には、俳優の大沢たかお主演で2023年に公開された映画『沈黙の艦隊』に、劇場未公開シーンを加わえ、その後のストーリーまで描いた“完全版”となるAmazon Originalドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1~東京湾大海戦~』が、動画配信サービス「Prime Video」で世界配信された。

 原作は、1988~96年に「モーニング」(講談社)で連載された、かわぐちかいじ氏の同名漫画。原子力潜水艦シーバットに核ミサイルを積載したまま突如逃亡し、全世界に「やまと」を宣言した潜水艦の艦長・海江田四郎(大沢)は果たしてテロリストか、それとも救世主か?さらに、新作映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』が、2025年9月26日に公開されることも発表されている。

 2020年4月より「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて連載され、今年11月に完結した赤坂アカ氏と横槍メンゴ氏のタッグによる漫画『【推しの子】』(コミックス全16巻)を、Amazonと東映により実写映像化するプロジェクトも展開された。11月28日よりドラマシリーズ全8話を「Prime Video」で世界独占配信。ドラマの続きとなる映画『【推しの子】-The Final Act-』が東映配給にて12月20日より上映中。出演は櫻井海音、齋藤飛鳥、齊藤なぎさ、ほか。

 原作は、主人公が伝説的アイドル・アイの子どもとして転生するファンタジックな設定と、ショッキングな描写もいとわないサスペンス要素、“芸能界”という複雑な世界に躊躇(ちゅうちょ)なく切り込んだストーリーで、幅広い世代の心をつかんだ。アニメ化もされ1期(2023年4月〜6月)、2期(2024年7月〜10月)に続いて3期の制作が決定している。また、舞台化も発表されている。

 今年1月に劇場公開された山崎賢人主演の映画『ゴールデンカムイ』も続きを『WOWOW 連続ドラマW(ダブリュー) ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-(ほっかいどういれずみしゅうじんそうだつへん)』として、10月よりWOWOWで放送・WOWOWオンデマンドで配信。さらにその続きを描く映画第2弾の製作が決定している。

 「週刊ヤングジャンプ」で2014年~22年にかけて連載された野田サトル氏の同名漫画が原作。明治末期の北海道を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡る一攫千金ミステリーと、厳しい大自然の中で一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちが躍動するサバイバル・バトルアクション。

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