和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月13日(金)

シュローダー 2025年市場見通し                外国株式




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このレポートでは、2025年のグローバル株式市場とエマージング株式市場の見通しをご紹介します。
市場環境の変化を受けて、注目しているセクター、国、テーマを探りながら、来年における株式リターンの機会について考察します。


グローバル株式市場の見通し

ウクライナや中東で続く紛争やその他の政治的混乱が影を落とした1年であったにも関わらず、S&P500は米ドルベースで年初来約25%上昇し、グローバル株式の代表的な指数であるMSCI ACWI指数は約18%上昇しています(2024年11月20日時点)。

今年の株式市場の堅調さを支えた大きな要因は、特に米国における企業業績と、それが2025年まで続くという投資家の楽観的な見方でした。

当面は、株価水準が高まっているにも関わらず、比較的良好な経済環境を背景に、株式市場は好調を維持できるとみています。しかし、さらに先を見据えると、以下の理由により、先行きには不透明感があります。


テクノロジーセクターの優位性の雲行きは怪しくなってきた?

今年上半期は、米国株式市場のリターンの半分以上を占めたのはメタ、アルファベット、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾン、アップルの6銘柄で、つまり大型テクノロジー銘柄でした。当然のことながら、これら6銘柄はすべて人工知能(AI)というテーマに関連しています。

AI用チップの主要メーカーであるエヌビディアの株価は、2022年11月のChatGPTのローンチ以来、600%以上上昇しています(図表1参照)。投資家の期待感の高まりは、軒並み好調な売上高と利益の伸びによってさらに後押しされ、図表1右側に示されるように、米国株式市場の集中度を記録的なレベルまで押し上げました。


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これらの企業、そしてテクノロジー・セクター全般の先行きは、依然総じて明るいとみています。大企業は一様ではありませんが、共通項があります。各業界を支配し、卓越した成長、マージン、リターンを生み出すことを可能にする特定の特徴を持つ傾向があることです。

こうした「フランチャイズ」を崩すような大きな規制介入がない限り、これらの企業は今後も極めて収益性の高い企業であり続け、 グローバル株式市場において重要な構成要素であり続けるでしょう。

しかし、このグループにとって深刻化している問題のひとつは、AIに向けられる支出の多さです。図表2が示すように、AIインフラを提供する3大企業、マイクロソフト、アルファベット傘下のグーグル、アマゾンは、AIをめぐる激しい競争に巨額の投資を行っており、その勢いはとどまるところを知りません。

これは、強固なバランスシートと強力なキャッシュフローにより、巨額の投資を行う余裕があるためでもあります。しかし、図表2の右側のグラフは、少なくとも今後2年間は、こうした投資による売上増の予測が実際にはかなり控えめであることを示しています。市場は、こうした投資の収益化が株主にとってプラスになるかどうか、確信が持てないのです。


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少なくとも最大手のテクノロジー企業にとっては、収益の伸びが鈍化し始めている時期に、上記のような事態が発生しています。AIからの投資回収期間が非常に長いと判明した場合、投資家は、少なくともエヌビディアのような最もエクスポージャーの高い企業については、技術優位の持続可能性に疑問を抱くのは当然です。


株式市場は割高だが、高い株価水準は当面維持可能

株式市場の強気相場が続いている結果の一つは、株式が割高になっていることです。一般的に使用されている様々なバリュエーション指標を使用し、長期(15年)の中央値と比較すると、米国株式は極めて株価水準が高いように見えます。英国や日本ですら決して割安な水準ではありません。

このような背景から、株式市場は何らかのネガティブなカタリスト(例えば、紛争の激化等)に対してかなり脆弱です。

しかし現実には、こうした株価水準は短期的にはかなり支持される可能性が高いといえます。マクロ経済の観点からは、世界的なインフレ率は依然として低下基調にあり、中央銀行は比較的同時期に利下げサイクルに着手することができます。

歴史的に見れば、図表3が示すように、金利低下はほぼ常に株式市場を下支えしてきました。現在の米国経済の力強さを考えると、景気後退の可能性は低いと思われ、世界経済の一部で金利に敏感な部分の景況感は強まるでしょう。


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ボトムアップの観点からは、米国経済の継続的な強さと、その他の先進国および発展途上国における緩やかな安定化が、2025年の売上と利益の成長余地をもたらすはずです。

世界の主要地域の今後2年間の市場の収益予想は、毎年平均8~12%の成長という強いものです(出所:LSEG Datastream, Schroders Strategic Research Unit、2024年11月時点)。株式市場の下落がないと仮定すれば、グローバル株式からのリターン機会は、目を見張るようなものではないにせよ、相応のものとなるでしょう。

これらの数字が暗に示しているのは、先の大型テクノロジー株に関する議論と関連する、市場における「拡大」という考え方です。つまり、より小規模な企業等、これまで軽視されてきた企業群が、プラスの資金流入の恩恵を受け始めるということです。図表4が示す通り、中小型株は大型株に対しても、また過去水準と比べても割安です。


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トランプ2.0は多くのことが起こりうる

これまでの内容が極めて楽観的なものであったとすれば、トランプ氏が米国の次期大統領に選出されたことは、中期的には投資家にとって不確定要素となる可能性が高いとみています。以下は私たちの潜在的な影響に関する見解です。

アメリカ・ファースト:この政策は様々な分野に適用されるでしょうが、一言でいえば、グローバル化の縮小、同盟関係の弱体化、不確実性の増大を意味します。市場は不確実性を嫌います。
関税と個人に対する課税:もしトランプ次期大統領が、すべての輸入品に10%または20%の関税をかけ、中国からの輸入品には60%の関税をかけるという政策を実施した場合、その影響は劇的なものになるでしょう。図表5が示す通り、関税は米国の消費者に対する直接的かつネガティブな課税です。トランプ次期大統領は個人に対する減税(主に上位1%の高所得者層が恩恵を受ける)によって影響を相殺しようとするかもしれませんが、いずれにせよインフレに寄与することになるでしょう。債券市場はすでにこれに注目しています。



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法人税減税:トランプ次期大統領は、法人税を現行の21%から15%に減税することで、米国企業の利益を維持するかもしれません。これは間違いなく株式市場にプラスに影響を与えるでしょう。
移民政策:最大1000万人の不法移民(その80%が10年以上居住している)を強制送還する計画を実行に移した場合、GDPへの影響は特に国境を接する州で大きくなる可能性があります。また、その実施には多大なコストがかかるでしょう。
エネルギー政策:エネルギーに関するトランプ次期大統領の見解は「ドリル・ベイビー・ドリル(石油の大量生産)」という言葉に集約されます。消費者のガソリン代を下げることが目的なので、トランプ次期大統領は米国の石油部門に生産計画を前倒しし、成長を促すでしょう。これは、世界経済と気候の脱炭素化にとって良いことではなく、額面通りでは再生可能エネルギーセクターにとっても良いことではありません。ただし、世界の他の地域が、炭素削減とネットゼロに向けた計画を進めており、米国のグリーンエネルギー企業もこれに参画するでしょう。


トランプ政権下では、世界は明らかに異なる場所になるでしょう。トランプ次期大統領の政策やイニシアチブの中には、意図した結果だけでなく、多くの意図しない結果を招くものもあるでしょう。少なくとも、その結果、市場のボラティリティは高まることが想定されます。

このような環境下でも、収益、キャッシュフロー、利益の面でポジティブなサプライズをもたらす可能性の大きい企業を発掘する、という方針に変更はございません。株価は時にファンダメンタルズから乖離することもありますが(時には予想よりはるかに長い期間)、最終的には常に企業業績に従うものです。変動が大きく、変化の激しい世界では、投資の規律の重要性が一層際立ちます。私たちは成長への対応と同時に、ボラティリティへの備えも怠りません。


エマージング株式市場の見通し

エマージング株式の見通しは、トランプ政権の影響に関する不確実性の影響を受けています。インドと台湾以外の株価水準はおおむね割安な水準にありますが、市場は不確実性に直面しています。主な要因は、関税リスク、米ドル高とイールドカーブの上昇(米国債利回りの上昇)、中国の政策、インド、テクノロジーの動向等です。


トランプ氏の勝利はエマージング株式市場に不確実性をもたらす

トランプ次期大統領の政策は米国のインフレ率に上昇圧力をかけ、米国のイールドカーブを引き上げ、米ドルを下支えすると予想されます。これはエマージング諸国の財政状況の重しとなり、株式市場にとっても逆風となります。

米ドルはすでに大きく動いており、エマージング通貨を圧迫しています。米国債利回りと米連邦準備制度理事会(FRB)の金利見通しも著しく調整され、エマージング諸国の実質金利(インフレ調整後)は上昇しています。


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トランプ次期大統領は関税リスクももたらしており、広範な関税の適用(米国への全輸出品に適用)と、中国に限定した関税の大幅引き上げ(選挙戦では60%の引き上げが取りざたされていた)の両方が考えられます。選挙戦の通り関税が急速に実施された場合、その影響の一部はエマージング通貨の下落を通じて吸収されるでしょうが、米国のインフレには大きな影響が出る可能性が高く、トランプ次期大統領の支持基盤である低所得世帯にはマイナスの影響が及ぶでしょう。そのため関税の適用については、選挙戦での主張より微妙なアプローチが予想されます。

特に中国との関係では、トランプ次期大統領の閣僚人事は中国に対して政治的にタカ派的であるように見えます。そのため、非対称な関税が適用されると予想されます。規模にもよりますが、これは中国の貿易量に影響を与え、大幅な人民元切り下げにつながる可能性があります。

人民元の大幅な切り下げは、競合するエマージング通貨にも圧力をかける可能性がありますが、中期的に見れば、競合するエマージング諸国の製造業は、サプライチェーンの継続的な多様化の恩恵を受ける可能性が高いとみています。

最後に、トランプ次期大統領が地政学に与える影響については、リスクと機会の両方があります。前述の通り、トランプ政権は中国に対してタカ派的であり、デカップリングが続くと予想されますが、これは必ずしも順調なものとはならないかもしれません。ウクライナについては、和平合意に、十分に強固な安全保障が伴えば、この和平合意と多額の復興支出が欧州のエマージング諸国の経済とリスクプレミアにプラスの影響をもたらす可能性があるとみています。


中国経済と市場は引き続き政策発表に敏感に反応

中国では9月、より協調的で断固たる政策支援への動きが見られました。しかし、金融政策は依然緩和的な水準にはなく、財政政策の実行は市場を失望させました。貿易サイクルは2025年にかけて鈍化することが予想され、中国はトランプ政権による関税リスクに直面しています。しかし、ティア1の大都市の不動産市場には安定化の兆しが見られます。

現在、中国経済と市場にはより強力な政策的裏付けがあると考えています。外国人投資家は依然として中国株式市場をアンダーウエイトしており、国内のキャッシュ残高は高水準にあります。


今後数カ月、インドへの追加投資の可能性

インド株式市場は、歴史的にみてもバリュエーションは割高な一方で、足元では名目成長率(インフレ調整前の成長率)が財政・金融引き締めに伴い鈍化しており、収益見通しが厳しくなるにつれ株式市場も軟化しています。これはチャンスかもしれません。

2024年のモンスーンは良好で、通常、農村部の所得向上につながると同時に、金融緩和の余地もあります。また、インドは地政学的に中立であり、他のエマージング諸国と比べて関税の影響を受けにくく、構造的成長の機会もあります。

最後に、外国人投資家のインド株式市場へのアロケーションは限定的です。今後数カ月は市場を注視し、バリュエーションと収益見通しが十分に調整されれば、投資機会があるとみています。


テクノロジーサイクルは2025年まで続くのか?

AIがテクノロジーサイクルを牽引してきました。テクノロジー企業の株価水準は上昇している一方、収益化の遅れを考えると、AI関連の設備投資の持続可能性には不透明感があります。

テクノロジーの可能性と、AIインフラを提供する米国の大手「ハイパースケーラー」企業が同業他社に後れをとることを嫌がる傾向にあることを勘案すると、当面は勢いが持続するとみています。

テクノロジーセクターの他分野は依然として軟調で、ダウンサイクルが長期化しています。この分野では、製品サイクルの改善に支えられ、2025年にかけて低水準からの回復が見られる可能性があります。


株価水準はおおむね魅力的だが、短期的には不透明感が重し

短期的には、トランプ政権の影響、AIのモメンタム、中国の政策支援という3つの重要な不確定要素があります。しかし、多くの市場の株価水準は広く割安であり、エマージング通貨も同様です。多くは織り込み済みであり、ストレスや不確実性の高い環境は、投資機会の創出につながる可能性もあるとみています。


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関連リンク
2025市場の見通し
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/intermediary/insights/outlook2025/


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