和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月24日(日)

「ガシャポンから丸いカプセルが出てこない」常識を覆す変貌を続けるカプセルトイ業界…ファン同士の交流も生み出す“推し活”との親和性

厚さ1cmまでの平面商材が出てくる『フラットガシャポン』(C) BANDAI (画像提供:バンダイ)
厚さ1cmまでの平面商材が出てくる『フラットガシャポン』(C) BANDAI (画像提供:バンダイ)
 ショッピングモールに百貨店、駅ナカなど、今やあちこちで見かけるカプセルトイ。昔の“子どもが喜ぶ安価なおもちゃ”というイメージから一転、今や大人の心もくすぐる精巧・多彩なラインナップで、幅広い層から人気を得ている。そんな中、市場を牽引してきたバンダイは、2022年に従来のカプセルトイの常識を覆す最大A4サイズ、厚さ1cmまでの平面商材が出てくる『フラットガシャポン(R)』(以下同)を発売。キャラクターやアイドルなどが印刷されたコースターやクリアファイルなど実用性を兼ね備えたラインアップが人気を集めている。「ガシャポン(R)」(以下同)は今後どこまで進化するのか? 市場のトレンドと今後の展望をバンダイに聞いた。

【画像】「#尊すぎて神」「#推しがいる幸せ」推しを推しまくれるストラップ

■「第5次ブーム」に突入、ブームの火付け役は“カプセルトイ専門店”

 コインを入れてハンドルを回すと、“下部の取り出し口に玩具の入った丸いカプセルが落ちてくる”カプセルトイ。その常識を覆し、ハンドルを回すと“上部の細長い隙間から、クリアファイルやうちわなど、薄くて平らな商品が出てくる”その名も『フラットガシャポン』が登場したのは、2022年2月。誕生のきっかけをバンダイのベンダー事業部 事業開発チーム 五十嵐達志氏はこう語る。

 「近年カプセルトイ市場はブームと呼ばれる盛り上がりを見せ、購入されるお客様の層も拡がっていったことから、我々はより幅広い層の方々にワクワクを届けられるよう商品バリエーションを増やしてきました。そんな中、既存の自販機を活かしながらも、新しくて、お客様に面白いと思ってもらえるようなサイズの商品を展開することができないかということから開発が始まりました」(五十嵐氏/以下同)

 現在のブームはカプセルトイ市場において、「第5次ブーム」といわれている。(※)そのきっかけは、カプセルトイが多数並んだ「カプセルトイ専門店」の増加だった。同社グループ企業であるバンダイナムコアミューズメントが2020年にカプセルトイ専門店「ガシャポンのデパート」を横浜ワールドポーターズに出店したのを皮切りに、翌2021年からは商品ラインアップがバンダイのオリジナルカプセルトイブランド「ガシャポン」のみで構成される「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」をグループ企業協業で展開、全国に店舗を拡大してきた。

 「それまでガシャポンは、通りかかったときにたまたま目にして買うというような、自販機との“出会い買い”のような形でご購入いただいていました。しかし、専門店ができてからは、ガシャポンを目的にお店に足を運ぶ方が増え、より幅広い層のお客様がガシャポンに触れられるようになり、人気が拡大していった印象です。毎週行くたびに新たな商品があって、飽きがこないことも人気の理由の一つだと思います」

■SNS上で交換するコミュニティも形成…グッズとして拡大する“推し”と日用品のコラボ商品

 専門店の増加と共に到来しただけに、第5次ブームの何よりの特徴は商品のバリエーションが大幅に増えていることだ。同社は、1983年、ガシャポンの第1次ブームを巻き起こした「キンケシ」を皮切りに、1994年にはフルカラーで彩色が施され、造形も精巧になった「HG(ハイグレード)シリーズ・ウルトラマン」で第2次ブームを創出。その後も妖怪ウォッチシリーズの「妖怪メダル」をヒットさせるなど、キャラクターものの商品を中心にブームを牽引してきた。

 その後も商品バリエーションを増やし続け、現在、月に100種類以上の商品を発売しているという。

 「現在、弊社の商品では、傘やペットボトルなどに目印として付けられる『めじるしアクセサリー』シリーズが幅広い層に人気を得ているほか、大人の男性を中心に、本物をリアルに再現した『いきもの大図鑑シリーズ』が人気となっています。また、消費者の生活の中にある品々や通常であればおもちゃにならない商品のミニチュア、平成レトロなど懐かし系の商品もトレンドになっています。フラットガシャポンではラバーコースターが一番人気で、実用的な物が増え、人気となっています」

 そんな第5次ブームの中ではカプセルトイと“推し活”の親和性も感じることができる。フラットガシャポン一番人気のラバーコースターでは、サンリオやちいかわなどのキャラクターデザインを発売し、ファンを喜ばせてきたが、このほか、K-POPグループやバレーボール男子日本代表の実写を使用したクリアファイル、人気アニメやアイドルのイラストをデザインしたうちわなどを発売。“公式グッズ”としても広がりを見せ、SNSを中心にファンの間で大きな話題を呼んでいる。

 「これはカプセルトイ全般においていえることですが、購入した商品をSNSにアップし、口コミで広がっていくということが最近、非常に増えています。さらに、K-POPアイドルやキャラクター系のガシャポンでは、それに加えて、自分の推しとは違う商品が出てきた際、SNSにアップして、欲しい人と交換するというコミュニティまでできています。単に商品を購入するだけでなく、ファン同士の交流も含めて商品が楽しまれるようになっているというのは、予想外の展開でした」

 このほか、同社は従来のガシャポンでも「#(ハッシュタグ)」に「推す」「尊すぎて神」など推し活ワードが付いたラバーを「#ハッシュタグつけるシリーズ」として発売。推し活グッズや自分の持ち物に付けて、推し活をさらに楽しめるとして、人気を呼んでいる。

■“90mmカプセル”、“キャッシュレス決済対応”まで…「まだまだ拡大する可能性を秘めている」

 商品開発においては、「なるべく早いタイミングでトレンドやお客様の需要をキャッチして、全方位に商品を展開できるよう頑張っています」と五十嵐氏。大切にしているのは、「お客様が欲しいと思うものを届けたいという思いと、カプセルの中から何が出てくるかわからないワクワクとドキドキをさらに高めること、また、カプセルを開けたときに、『こんなところまでこだわっているんだ』と驚いていただけるクオリティ」だと語る。

 フラットガシャポンはまさにその思いの表れだが、今年8月には、さらにカプセルトイの常識を超える超BIGな「90mmカプセルシリーズ」を発表。手のひらに収まりきらないほどのサイズとより再現度が高く迫力ある仕様で話題を集めている。

 2021年には、100円硬貨5枚、500円硬貨4枚まで利用できるようにしたことから、最大2500円の商品まで発売できる「プレミアムガシャポン」も登場。決済方法も進化させており、2019年からは交通系電子マネーや二次元コード決済など、キャッシュレス決済に対応した「スマートガシャポン」を展開。2022年にはさらに現金決済にもキャッシュレス決済にも対応する自販機「ガシャポンステーションW」を世に送り出した。

 さまざまなアイデアと工夫で市場を拡大しているガシャポン。五十嵐氏は今後について、「専門店は今後も増え、一過性のブームにとどまらず、まだまだ拡大する可能性を秘めている」と分析する。さらに、海外で展開しているガシャポン専門店も非常に反響が良いことから、「今後はさらにワールドワイドでガシャポンが拡大していくのではないかと考えています」と胸を張る。

 何が出てくるかわからないワクワク感で、登場当時に子どもたちを魅了したカプセルトイの魅力は“変えず”、値段以上のクオリティや、意表を突く商品ラインナップなど、常にユーザーに驚きを与えるべく“変化”を続けているガシャポン。その快進撃はまだまだ続きそうだ。

取材・文/河上いつ子

(※)バンダイ調べ

PROFILE/株式会社バンダイ ベンダー事業部 事業開発チーム 五十嵐達志
高校時代から楽しいことを仕事にしたいという思いでバンダイへの入社を目標に掲げ、玩具専門店でのアルバイトを経て大学卒業後、バンダイに入社。カード商材や玩具などの企画開発を担当し、2016年にベンダー事業部に配属。「プレミアムガシャポン」や「フラットガシャポン」、「ガシャポンオンライン」などガシャポン全般のインフラ開発に携わっている。

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