和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2022年07月04日(月)

基礎研究の小径から 和歌山高専総合教育科/-85-/独占禁止法と市民(13)/経済法後藤多栄子

 早いもので連載をさせていただいてから13回目となります。独占禁止法についての最終回としたく思います。12回の最後で述べた「課徴金」という行政罰の何億円となることもあるお金を払わなくて済む場合についてお話ししたく思います。

 独禁法違反事案の端緒には、複数の始まりがあります。一つに、この企業は3条後段違反である不当な取引制限のカルテルをやっているようだ、なんだか怪しいぞ、調べてみようと、監督官庁である公正取引委員会が職権で調査を始めるパターン。次に、どこからか情報が入り、あの企業は優越的地位を利用して立場の弱い業者いじめをしている、なんとかしてくださいよと申告がされて調査が開始されるパターン。また、中小企業庁から調査請求があって、調査を開始するパターンがあります。そして、「課徴金減免制度」を利用するパターンです。

 まず、「課徴金」ですが、独占禁止法違反のタイプによって、その金額が異なっています。例えば、小売業が他のお店と相談して同様の商品価格を決めていた場合などは、原則年間売上高の3%の課徴金が課せられます。卸売業者が他の卸売業者と結託して価格設定をしていた場合は、原則2%の課徴金が課せられます。原則としているのは、再犯の場合や主導的立場をとった場合は割り増しで金額が5割加算される仕組みです。そして、最も高い課徴金を課せられるのは、製造業で原則10%になります。この比率はそれぞれの業者集団において、年間売上利益率をベースに設定されたものです。ですので、製造業で違反行為のリピートをすると、5割増しで15%の課徴金率になり、カルテルの場合など複数の事業者が関わってきた場合や数年にわたって違反行為を続けてきた場合も年数を掛け算するため(3年間を上限)、一事案での課徴金合計額は億になる場合が多々あるわけです。この課徴金は支払われたら国庫に入ります。

 課徴金を徴収することで国庫が潤うことはよいことではあるのですが、独禁法の適用において、その目的は違反行為の撲滅であります。カルテル行為は最も数の多い違反行為であり、仲間同士が口封じをして外に漏れないようにすると発見がしづらいものです。そこで、数年前に導入されたのが減免制度、つまりお金を払わなくていいよ、減額してあげるよという制度なのです。もちろん見返りが必要です。違反行為をした事業者自身がその違反内容を公正取引委員会に報告をすると、免除や減額処分を受けることができます。公取の調査開始前に、ほかの事業者より早く一番に報告すると、課徴金の100%免除を受けられます。アメリカやEUでも同様の制度があります。