和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2022年05月28日(土)

広瀬すず×松坂桃李「うまく言葉では言い表すことができないものを受け取って」

広瀬すず、松坂桃李(C)ORICON NewS inc.
広瀬すず、松坂桃李(C)ORICON NewS inc.
 2020年本屋大賞を受賞した作家・凪良ゆう氏による小説を原作にした、映画『流浪の月』(公開中)。主演の広瀬すずと松坂桃李が、李相日(リ・サンイル)監督の撮影現場や印象に残ったシーン、本作を鑑賞する観客に伝えたいメッセージを語ってくれた。

【動画】映画『流浪の月』俳優陣の演技に釘付け予告編

【あらすじ】雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗(白鳥玉季)に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文(松坂)。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2ヶ月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗(広瀬)と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮(横浜流星)がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷(多部未華子)が寄り添っていて…。

――映画『いのちの停車場』(成島出監督)に続いての共演となりましたが、本作でのお互いの印象は?

【松坂】すずちゃんの“役者の姿を見た”という感じです。改めて今回、更紗と向き合っている姿、現場での佇まいも含めてなんですが、お互いにはらわたを見せ合ってぶつからないとやっていけないような、そういうシーンが多い作品だったので、すずちゃんの役者魂みたいなものを強く感じました。

【広瀬】カメラが回っていないところでのイメージは前の作品と変わらなかったんですが、お芝居に入った時は別人でした。何か沸々としたマグマみたいな熱いものを感じましたし、気安く触れてはいけないような、松坂さんというより、文を感じさせる雰囲気をまとっていたので、脳内が気になりました。「今、何を考えているのかな?」と、よく思ってました。

【松坂】何、考えていたのかって? 役づくりのために食事制限していたので、頭の中ではずっと「お腹すいたって」って考えていたと思います(笑)。

――誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった更紗と、その事件の“加害者”とされた青年・文。さらに、お互いが抱えているセンシティブな秘密やトラウマ、とても難しい役だったと思いますが…。

【松坂】撮影中は、いわゆる和やかな感じというのではなくて、すずちゃんや僕だけでなく、キャストそれぞれに大変なシーンが多かったので、各々が集中力を切らさないように、ギリギリのところまで追い込んでいる感じが全体的にあったんですね。そんな中、僕自身に関しては、こんなこと言うと怒られそうですが、いまだに文という人物をつかみきれていなかったような気がしてならないんです。まだまだ知らない部分がたくさんあるような気がして。撮影中、ずっとそういう不安があって、その不安に寄り添ってくれたのが李さんでした。一つひとつ不安を取り除いてくれたので、かろうじてカメラの前に立つことができた、それくらいギリギリのところで演じていました。

【広瀬】わかります。私も更紗というこの難しい役をつかんでいるとはとても言えない、そう思いながら撮影していました。日常で起きる出来事や出会いのすべてがあの事件につながっているように思ってしまう、その縛られている不自由な感じがしたんですけど、李監督からは、「それが更紗にとっては普通のことで、更紗は普通に明るく生きている人です」と最初に言われて、彼女の「普通」って何だ?と考えてしまいました。監督やほかのスタッフさんと相談しながら、試行錯誤しながら1シーン、1シーンを撮っていたので、映画が完成しても、自分が役をつかめていたのかわからないというのが正直な気持ちです。

■自分の心に素直になって、そこに希望を感じてもらえたら

――『流浪の月』ではいままでに観たことがない広瀬さん、松坂さんを観た、そんな感想を持ちました。ご自身にとってはどんな体験になりましたか?

【松坂】僕は今回、自分史上最も役と向き合う時間が濃かったように思っています。この作品の世界に没入していた感覚は、自分の中で初めての経験だったかもしれません。役に対してじっくり腰を据えて向き合うというのは、こういうことなんだぞ、というのを改めて教えてもらった感じです。今回の経験というのは自分にとってすごく大きくて、30代前半で経験できてよかったと思えるものだったので、今後にどう生かせるか自分次第なんですが、楽しみになりました。

【広瀬】流星くんとは初共演で、結婚を目前にした恋人同士という設定だったのですが、李監督から「まずは本人同士の距離感を縮めた方がいいんじゃないか」と、二人きりで話し合う時間を作っていただきました。そういう時間のかけ方、コミュニケーションを深めて、役者同士の関係性から作っていくという経験ができたのは、私にとっても大きかったです。

――広瀬さんと横浜さんの一種のアクションシーンが衝撃的でした。

【広瀬】李監督の『怒り』に出演した時もそうだったのですが、本番のカメラが回るまで、自分がどうなるかわからないんですよ。もちろん、台本があって、アクションの形も練習して、時間経過とともに感情がどう変化していくのかも頭に入れておくけど、理性を失った状態を理性的に演じるのって、すごく難しい。逆に準備がいらないくらい、これは個人と個人の戦いだ、と思っていました。本番、流星くんが演じる亮が怖すぎて、思わずつかんでしまったクッションを離したくないっ!ってなりました。お互いにお芝居なのかなんだったのか、もうわからない感じでした。

――一番印象に残っているシーンは?

【松坂】内田也哉子さんが演じているお母さんとのシーンですね。映画の中では終盤に近いところで出てきますが、時系列としては10歳の更紗と出会う前の出来事を描いた場面。文がお母さんにあることを打ち明けるんですけど、それを受け入れてもらえなかった。「お母さん、こっちを見て」と言った時の也哉子さんの目がものすごかった。息子を見ているようで、全く見ていない目。あそこで思いっきり弾かれた感じがしたんですよね。その強烈な拒絶体験から文は自分からいろんなものを拒んでいくようになったのかな、と思いました。

【広瀬】そんなことがあった後、10歳の更紗に出会ったんですよね。私は、更紗が文に家に帰りたくない理由を打ち明けた後、アイスを無言で食べるシーンが一番泣きそうになりました。優しいとか、そういうことじゃなくて、拒絶するわけでもなく、無視するわけでもなく、近づいてくるわけでもなく、ただそこにいるって感じの文が印象的でした。それは「救われた」という感じでもない、「癒された」でもない、肯定してくれたような、報われたような感覚になったんじゃないかなって。その時、更紗の中で文に対する信頼感や情が動き出したんだろうな、といろいろ想像できるシーンだったので、印象に残っています。

――最後に、これから映画を観る人へ、もうひと言お願いします。

【松坂】賛否両論あるとは思うんですけど、今の世の中にある言葉で、うまく当てはまる言葉が見つからない、二人の関係性、つながりというものに、なんか共感できるという人もいるだろうし、もしかしたら誰かの救いになるかもしれないし、ある種の希望のようなものになるかもしれない、そう願って作るのが映画だと思う。うまく言葉では言い表すことができないものを受け取れる作品になったと僕は思っているので、劇場で何か受け取ってもらえるとうれしいです。

【広瀬】松坂さんがおっしゃった「希望」というのはすごくあるな、と私は感じています。更紗と文が素直な思いだけで生きられたら、たぶん、二人には希望しかないし、明るい未来しかない。なので、言い表しにくい2人の関係性を目の当たりにした後に、自分の心に素直になってみて、そこに希望を感じてもらえたらいいなと思います。

【フォトギャラリー】映画『流浪の月』場面写真
広瀬すず&松坂桃李W主演『流浪の月』 特報映像&ティザービジュアル解禁
【写真】親友感あふれる広瀬すず&池田エライザ&佐久間由衣
【写真】高貴さを漂わせる津田梅子姿の広瀬すず
【写真】広瀬すず、松坂桃李、子役と笑顔全開の3ショット
提供:oricon news