和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2021年09月17日(金)

紀伊半島で増えているの? 出没相次ぐツキノワグマ

和歌山県内でのクマの目撃情報
和歌山県内でのクマの目撃情報
わなにかかったツキノワグマ(14日、田辺市龍神村甲斐ノ川の林道で)
わなにかかったツキノワグマ(14日、田辺市龍神村甲斐ノ川の林道で)
 紀伊半島に生息しているツキノワグマの目撃情報が和歌山県内各地で相次いでいる。紀南地方でも田辺市、上富田町の住宅地など、これまで出没しなかった地域で目撃され、住民を不安にさせた。絶滅の可能性があることから、保護対象になっているツキノワグマだが、その数は増えているのか、減っているのか。なぜ平野部に出没するようになったのか。専門家や関係者に話を聞いた。

 紀伊半島のツキノワグマは、1980年代に3県(和歌山・奈良・三重)で180頭という危機的な生息数が算出されたことを受け、94年から3県で狩猟・捕獲自粛の対象となっている。環境省は「絶滅の恐れのある地域個体群(LP)」、県は、絶滅危惧1類に指定している。

 県自然環境室によると、県内での本年度のツキノワグマ目撃情報は20日現在33件で、すでに昨年度の26件を超えている。ここ10年で最も多かったのは2016年度の58件で、本年度は過去最多のペースで増えている。

 田辺市龍神村では14日、シカやイノシシの駆除のために設置している「くくりわな」にツキノワグマがかかる騒ぎがあった。県は専門業者を呼んで麻酔銃を使って捕獲し、別の山へ放った。

 県によると、捕獲したクマは4~5歳の雄で、体長約1・2メートル、体重約47キロ。龍神行政局の担当者によると、村内でクマは毎年目撃されており、くくりわなにクマがかかることも珍しくない。ハチの巣箱を荒らされるなどの被害は出ているが、人的被害は今のところないという。

 県自然環境研究会の細田徹治会長は「目撃情報は増加傾向だが、生息数は1998年以降、調査していないため、実態がつかめていない。正確な生息数について、県をまたいだ調査を早急に実施する必要がある」と訴えている。

■出没増加の原因

 全国的に中山間地域では過疎化が加速し、仕事で山へ入る人が減少。クマの警戒心が低下し、平野部での出没件数が増加しているとみられている。

 これまで出没していなかった平野部でも出没が増えている原因として、細田会長は、山に餌が不足している▽山の生息環境が悪化している▽餌を探しているうちに偶然に市街地へ来てしまった―など、いくつかの要因が重なっている可能性が高いと分析している。

 細田会長は「人が生活していたときに植えられた柿、ビワ、クリの木が放置されたままだったり、秋の収穫期にミカンなどの廃品を野山や田んぼに捨てられたりしているのをよく見掛ける。これらの行為は、全て餌付けしているのと同じ。住民の方には、適切な管理をお願いすることが大切。クマが出没した地域では、猟友会などに協力してもらってパトロールを行い、クマにとって人里は怖い所であると認識させることが有効」と話した。


 ツキノワグマ 国内最大級の陸上哺乳類。雄は体長1・2~1・5メートルで体重40~100キロ。雌は体長1~1・3メートル、体重30~60キロ。体毛は黒く、胸部に月の輪模様があるのが特徴だが、個体によっては模様がないものもある。野生下での寿命は15~20年。ササ、ヤマブドウ、クリなど植物中心の雑食性で、魚や昆虫なども食べる。

 基本的に単独で行動するが、初夏の繁殖期には雄と雌が一時的に行動を共にする場合があるほか、母グマと子グマは生後1年半ほどは一緒に行動する。早朝、夕方が最も活動する時間帯だが、非常に臆病で、優れた聴覚と嗅覚を駆使して人との接触を避けている。自治体などは、山へ入るときは鈴を付けるなど、クマに人間の存在を知らせるよう呼び掛けている。