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現場目線の空き家対策 田辺市の施策に注目を

 紀南の各地で空き家が増えている。それに比例して倒壊の危険がある空き家が増え、景観も損なわれていく。周辺の治安を悪化させる心配もある。早急な対策が必要だ。

 総務省によると、2013年の県内の空き家は8万6千戸。住宅総数に占める空き家率は18・1%で全国3位。平均の13・5%を大きく上回っている。今後、新築着工数は減少に転じるが、それでも空き家は増える見通し。野村総合研究所の試算では、33年の全国の空き家率は現在の2倍以上、30・4%に上昇するという。

 空き家対策特別措置法の施行で、倒壊の危険があるような空き家は、市町村が修繕や撤去を指導、命令できるようになった。とはいうものの、所有者の協力なしにはことは進まない。

 ところが、所有者が遠方に住んでいたり、高齢だったり、経済的な問題を抱えていたりで空き家にせざるを得ない場合がある。そこに相続問題が絡めば、さらに問題が複雑になる。

 そうした実態を踏まえ、田辺市は所有者と隣接住民を仲介し、解体費と登記費程度で空き家の売買が成立する仕組みを整えた。

 これによって、所有者はほぼ自己負担なしで空き家を処分できる。隣接者は、倒壊や害虫の発生などの悩みが解消されるし、相場より安価に土地が取得できる。市の負担はゼロ円。「三方よし」の施策として、国土交通省も先進事例として注目している。

 同市では約40年間、空き家になっていた物件がいま、市の仲介で売買され、畑として活用されている例がある。

 この空き家は所有者の死亡後、市外に住む息子と娘が相続人になっていた。屋根が落ち、壁材が飛散。シロアリが発生し、ネズミなどの巣となっていた。市は勧告も出して、改善を働き掛けたが、息子は「経済的理由で対応できない」、娘も「自分は相続していない」などと主張。2年にわたって交渉したが、進展はなかった。

 ところが、市が仲介して隣接住民に買い取りの意向を確認すると、畑を拡張したかったということで売買が成立。その解体には市の補助金を活用したため、所有者も買い主も負担が軽減された。

 所有者が長期入院中で売買ができないケースでは、所有者の娘の了解を得て、隣接住民の負担で、空き家を撤去した。その代わり、隣接住民が跡地を駐車場として安価に借りられるようにした。将来的に娘が相続した場合には売買することも合意している。

 こうした事例は、大都市圏に比べ、地価の安い地方でこそ成り立つ仕組みだろう。これを他の自治体にも普及させればどうか。

 人口減少が進む中、この地は空き家以外にも少子高齢化、耕作放棄地の増加、公共交通の衰退などさまざまな課題を抱えている。

 それを中央からのお仕着せ施策で解決するには無理がある。田辺の空き家対策のような、地に足の着いた施策に学びたい。 (K)


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