AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

魅力のクマノザクラ 地域の宝に育て上げよう

 ほのかなピンク色の桜がいま紀伊半島南部の山あいに彩りを添えている。森林総合研究所(茨城県つくば市)と和歌山県林業試験場(上富田町)がこの3月、約100年ぶりの新種と発表したクマノザクラである。

 桜研究の第一人者で森林総研・サクラ保全担当チーム長の勝木俊雄氏らの調査で判明した。調査の標本とした木があり、分布域の中心でもある古座川町をはじめ紀伊半島南東部の和歌山、奈良、三重県の山間部に数万本以上が自生していると推定されている。

 同じ地域に生育するヤマザクラやカスミザクラと似ているが、花や葉の形が異なる。開花期もこれらより2〜3週間早い。こうしたことから新種と認定された。1915年にオオシマザクラが新種と発表されて以来のことである。

 樹高は最大で16メートルほど。周囲に高い木があると、光を受けられず衰弱するが、きちんと手入れをすれば100〜200年は生きるという。名称は分布域にふさわしい名前として命名した。

 この桜は学術的にも貴重だが、観賞用にも適している。淡いピンク色の花が美しく、ソメイヨシノと同様、葉が出る前に咲き、より美しさが引き立つからだ。

 勝木氏は「観賞価値が高く、観賞木として有用な樹木となる」と評価。野生の木は観光資源に、植栽木は庭園や公園での利用が見込めるという。

 県が18日に古座川町で開いた現地説明会では、この桜を目の当たりにした参加者から「花は白っぽいけど、木全体で見るとピンク色。清楚(せいそ)な姿が美しい」などの感想が聞かれた。

 桜は古くから春の花として人々に親しまれてきた。江戸末期に交配種のソメイヨシノが生まれ、それが全国に普及するまでは、ヤマザクラが花の代名詞として多くの人を引き付けた。

 桜並木など住民が長い時間をかけて育んだ桜にも見応えがあるし、たった1本でも人を魅了する巨樹もある。だからこそ、専門家が太鼓判を押すクマノザクラを地域の宝として守り、地域資源として生かしていきたい。

 森林総研と県林業試験場は、すでに花の美しい優良個体を探す取り組みを始めている。増殖方法の確立や病害への抵抗性の検定をすることで、高品質な種苗の普及も計画しているという。

 分布域の中心にある古座川町はクマノザクラを「町の花」に指定、佐田地区にある七川ダム湖畔のソメイヨシノを少しずつこの新種に植え替える方針を示している。

 佐田地区では、1955年に県営七川ダムが完成したのを機に地域の人らがソメイヨシノ約3千本を植えた。90年には「日本さくら名所100選」にも選ばれ、シーズン中は多くの花見客が繰り出す花の名所だ。しかし、植えてから60年以上が経過し、樹木の老化が進んでいる。

 そうしたことも視野に入れ、後世に引き継げる長寿桜を地域の宝として育てていきたい。 (I)


更新)