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田辺の市街地活性化 21世紀の宿場町目指せ

 田辺市の中心市街地ではいま、大型事業が相次いでいる。市は国の補助事業で駅前の景観刷新や闘鶏神社参道周辺の整備、扇ケ浜公園の新武道館建設に取り組む。JRは紀伊田辺駅の建て替え工事を始めた。それぞれが熊野の「玄関口」にふさわしいまちづくりの一翼を担うはずだ。

 しかし、肝心の住民の姿が見えてこない。事業が行政の主導で進んでいるからである。まちづくりや地域経営の先進地では、民間が「身銭を切って」スタートさせた取り組みを、行政が資金面や規制緩和で支援し、連携する例が多いが、田辺市ではそれが逆さまになっている。民間の活力が低下しているせいもあるのだろう。

 象徴的な数字がある。2017年の調査では、10商店街の空き店舗率は18・7%。駅前商店街は23・7%である。16年の市民意識調査では、中心市街地に魅力があると思う市民は14%だった。

 駅前の一等地での「にぎわいづくり」を目的に市が13年に整備した駅前広場も当初の目的とはうらはらに、啓発運動や献血など年間20件程度の利用があるだけ。ひいき目に見ても「熊野の玄関口」という姿とは遠く離れている。

 まずはこの広場の活性化から手掛けてはどうだろう。活用のルールを見直し、従来は禁止していた物販を認めて「定例マーケット」を開くのである。

 商店街の活性化には、時代に合った新規店舗の参入と新陳代謝が欠かせない。とはいえ、恒久的な店舗を持つのは難しい。そこで、例えば「自分で作ったもの」「地場産品」などに絞った「お祭り広場」を開催。そこで実績を積み、次のステップに進みたいという人には、空き店舗を利用したシェアショップを紹介、そこから実店舗につなげていけばどうだろう。

 こうした仕組みができれば「店を出してみたい」と思う人が自然と集まり、駅前から商店街へと人の流れを生むきっかけにもなる。新しい施設と組み合わせた「周遊するまち」としての魅力も向上するのではないか。

 田辺駅は熊野の玄関口。市街地は熊野古道の分岐点、聖地への入り口として栄えた歴史がある。「熊野古道を歩く人はお金を落とさない」「田辺はただの通過点」と嘆く前に、この歴史と立地を活性化の好機として現代風に生かせないか。市街地を21世紀の宿場町として再生するのである。

 ゲストハウスは増えているし、県内屈指の飲食店街もある。昔ながらの銭湯もある。行政が規制を緩和し、空き家・空き店舗の活用を支援して、宿泊関連の施設を充実させてはどうか。

 これまでも市は市街地再開発に巨額の税金を投入して「器」をつくってきた。しかし、それを生かす政策はほとんどなかった。そこに変化を起こせば、事態は進展するのではないか。

 「稼ぐ」というキーワードで、民間と行政が宿場町の再生に取り組めば道は開ける。双方の覚醒と努力を求めたい。 (K)


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