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熊野古道の保全基金 「地域の宝」本気で守れ

 田辺市が「熊野古道の森を守り育む未来基金」を設立する。世界遺産・熊野古道周辺の森林を保全し、次世代につなぐのが目的で、原資にはふるさと納税寄付金の一部を充てる。

 古道周辺の森林はバッファゾーン(緩衝地帯)に指定され、条例で開発は抑制できる。しかし、高齢化や後継者不足で、適切な管理ができていない森林が多い。

 そうした森林の大半は、スギやヒノキの植林地で、根が浅く、維持管理が十分でない林も少なくない。ゲリラ豪雨や台風などで土砂崩れや倒木が起きやすく、古道そのものが損壊する危険性もある。

 世界遺産に登録された熊野古道は、田辺市内に限っても旧田辺市から中辺路町、大塔、本宮町にかけての延長65・5キロ。その周辺100メートルがバッファゾーンだから、面積は655ヘクタールにも及ぶ。

 世界遺産に登録される前から旧本宮町が36ヘクタール、旧中辺路町が16ヘクタールを公有化。田辺市も森林管理に力を入れてきた。それでも、保全できているのはほんの一部である。

 基金は森林の公有化や間伐支援に充てる。そのためには森林全体の状況調査が必要だ。適切に管理されていない森林、その所有者の情報を整理し、その上で、適切な管理を求めるという。

 その際、将来的に適切な管理が難しいと判断した場合は、買い取りも検討する。森林経営者や有識者らでつくる委員会で、優先順位や価格を審議。委員会の決定に基づき、森林所有者と交渉する。

 公有化すれば、市主体で管理ができる。ただし、すべて購入するには6億円以上かかる。継続的に間伐と枝打ちをする場合、国の補助金を活用しても年間1千万円ほどの経費が必要という。

 市は6月の市議会に提案した補正予算案に基金への積み立て分として1千万円を計上。今後も「ふるさと納税」の寄付金を原資に積み立てを続けることにしている。

 これまでも、ふるさと納税の使途には「熊野古道」の項目があった。最近3年間は毎年2千万円を超える寄付があり、昨年度は継桜王子跡の保存整備や闘鶏神社周辺の景観保全に活用した。

 一方で「世界遺産追加登録記念ポロシャツの作成」「元女子プロテニス選手との古道ウオーク」「俳人の講演会」など、景観保全とは直接関係のないイベントにも使っている。保全への思いを込めて寄付した人からすれば肩すかしをくった使い方といえよう。

 それに対して、今後は一部とはいえ寄付を基金に積み立てる。保全の目的が明確になることで、共感を得やすくなると期待したい。

 熊野古道は道だけでなく、周囲を取り巻く山や川、人々の暮らしなどが一体となった「文化的景観」が主役である。それを地域の宝として後世に伝えるには、自然を良好な状態で維持し、地域の暮らしや文化を継承することは私たちの義務である。責任は重い。

 森林整備はその第一歩である。基金の設立を世界遺産を守り、育むきっかけとしたい。(K)


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