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世界農業遺産 「体感」で盛り上げよう

 「みなべ・田辺の梅システム」が国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定されて1年。システムの維持とともに重要な地域振興の手だては、いまも手探りの状態が続いている。

 みなべ・田辺地域では、養分が乏しい山の斜面を梅林として活用するとともに、その周辺の薪炭林は残して水源涵養(かんよう)と崩落防止の機能を持たせ、その薪炭林にすむニホンミツバチを梅の受粉に利用して、高品質な梅を持続的に生産している。400年以上受け継がれてきた仕組みであり、今後も引き継ぐべき重要な伝統的農業、生物多様性、農村文化、農業景観として評価された。

 認定に伴い、みなべ町や田辺市などでつくる「みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会」は四つの専門部会を設置。部会ごとに集まって活用に向けた方策を話し合っている。11月には農業遺産の先進地から関係者を講師に招き、みなべと田辺で勉強会も開いた。

 その中で、議論が進んでいるのが農業遺産を生かしたブランド認証制度。勉強会では「能登の里山里海」(石川県)の関係者が認定商品の売れ行きが平均して5割増になったことを紹介。メンバーは認定の基準や販売面での優位性などに強い関心を示した。

 しかし、専門部会では認定エリアを巡って意見が続出した。農業遺産に認定されたのは、みなべ町内と旧田辺市内だが、周辺の田辺市中辺路町や龍神村、上富田町、印南町などにも栽培地が広がり、その梅をエリア内の梅加工業者が使っており「分けるのは困難」という意見がある。農地は山の斜面、栽培方法は減農薬などと厳密に基準を定めるべきだと指摘する意見もあり、ブランド認証の基準はまだまとまっていない。

 認知度が高まらないという課題もある。せっかく農業遺産に認定されたのに、みなべ町の南部梅林と岩代大梅林の観梅者数は今年、ともに前年より少なく、目標を大幅に下回った。

 協議会は広くPR活動を続けている。11月には東京都で、国内にある他の7地域の農業遺産認定地と連携し、梅や農業遺産をアピールした。田辺市もまた、世界遺産「紀伊半島の霊場と参詣道」の追加登録と合わせた「W世界遺産」と強調して発信を続けている。

 しかし、それ以上に求められるのが地域の具体的な盛り上がりであり、農業遺産を身体で味わう発想ではないか。

 その視点で考えれば、いま田辺市上秋津の人たちが取り組んでいる農業体験イベントや民泊、ウオークコースの整備などが一つのモデルとなる。世界遺産を見て楽しみ、舌で味わい、足で歩いて体感する。それに満足感を得た人がリピーターになり宣伝係となって、広く魅力を発信する。そうした方策を具体化すべきだろう。

 先人たちがつくり上げた日本一の梅の産地は地域の誇りである。行政と民間が手を携えて知恵を絞り、世界が認めた郷里の魅力を次世代につなげたい。 (Y)



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