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「本でつながる」

 朝日新聞で記者をしていた頃、僕は「読書欄」が大嫌いだった。名の知れた研究者や作家らによる書評委員がそれぞれ推薦する本を紹介していたが、それが何となく「上から目線」に感じられたからだ▼「良書を紹介するのは賛成。でも、たまには徹夜してでも読みたい本も選んで」と声を上げたが、相手にされなかった。そこで、大阪版の責任者になった時、そこに毎週、僕が選んだオモシロ本を紹介する欄を設けた。名付けて「乱読・味読・お買い得」。途中から掲載紙面が移行したが、その後も「勝手にオススメ」と名を変えて連載を続けた▼7日付の朝日新聞に「識者120人が選んだ平成の30冊」という記事があった。そこには以前、僕のコラムで取り上げた高村薫の『マークスの山』が入り、徹夜も辞さず、一気に読んだ宮部みゆきの『火車』や桐野夏生の『OUT』、浅田次郎の『蒼穹の昴』も選ばれていた。うれしいことに、僕が多大な影響を受け、折々に読み返している渡辺京二の『逝きし世の面影』も30番目に入っていた▼本は好みで読めばいい。しかし、自分だけの楽しみにしておくのではもったいない。「この本は面白かった。読んでみたら」と友人に推薦するのも喜びの一つである。共通の本を話題にできる仲間がいると、それだけで幸せな気持ちになれる▼今春、就職する人や大学、高校に進む人たちにも、ぜひその喜びに目覚めてもらいたい。(石)


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