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「稗田さんのことば」

 本紙の正月別刷りに掲載された稗田一穂画伯の「黎明」を繰り返し眺めている。晴れた空に突き抜けるような紅(あか)い花。大胆な構図と色彩のコントラストの素晴らしさ。新聞紙上の印刷ではなく、原画ならばどんな魔力があるのだろうと想像するだけでも楽しい▼制作意図について、稗田さんはこんなふうに書いている。「右に立つ紅い蘭花は主役であるが、重要なこの花と共に、むしろこの花を含む大きく、暖かに重厚な空気、いや空間の表現を心掛けた」。この絵を見た誰もが引き付けられるであろう紅い花ではなく、目に見えない空間の表現を心掛けたというのだ▼この言葉が胸に響いた。大切なことは目に見えない。けれども、確かに目の前にある。それをどう表現しようか、という発想に共感を覚えたのだ▼私たちの周囲には、大切なことにもかかわらず、注意しないと見えないモノやコトがあふれている。家庭で虐待されたり、学校で仲間外れにされたりして苦しんでいる子どもたちのSOS、環境が悪化しても、悲鳴もあげられない森林や農産物。海洋汚染も深刻だ▼しかし、注意深い人にはそれが見える。それを絵画や文章にして伝える人もいるし、田畑に水を配り、草を刈る人もいる。海辺に打ち上げられたごみやプラスチック製品を集めるボランティアもいる▼僕もその列に加わり、見えないコトを文章に紡いでいかなければ、と心を新たにした。(石)


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