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「しめ縄に寄せて」

 師走も押し詰まったこの時季、兵庫県の農村部にある実家では、迎春用のしめ縄を作るのが父親と長男の僕の役割だった▼材料は収穫後の稲わら、飾り付けのマツの若木とウラジロと呼ばれるシダ。マツは近くの里山から必要数を集め、ウラジロは隣村から親戚のおじさんが自転車で届けてくれる▼わらの上部を木づちで打って編みやすくし、下部のしゃんとしたところはそのままにしてつり下げる。わらの数は縁起の良い7本・5本・3本。玄関と神棚用に飾る大きなしめ縄を作った後は小さなしめ飾りにかかる▼井戸の神さま、かまどの神さま。火の神、火よけの荒神さん。半径300メートルほどの範囲に祭られているお稲荷さんや祇園さん、八幡さんの分も作る。便所や牛小屋、通用口の分も必要だし、通学用の自転車に付けるのまで含めると、毎年十数組は作った▼振り返ると、当時は生活の中に数多くの神さまが共存していた。自然に対する信仰と畏敬の気持ち。それが新年に家の内外を清浄にして神さまをお迎えする儀式となって伝えられてきたのだろう▼時は移り郷里からも遠く離れて、いまは集合住宅住まい。自宅には神棚もない。それでも身の回りの神さまを敬い、畏れる気持ちは変わらない。スーパーなどの店頭に美しいしめ飾りが並んでいるのを見るたびに、こうした習俗を伝えてきた人たちの心情に思いをはせる▼さて、新しい年の初詣はどこにしようか。(石)


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