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「歳暮の滋味」

 師走商戦を狙ったテレビCMや新聞折り込みの攻勢も終わり、家庭の関心は正月料理に向かっている▼幼い頃のわが家では、母がエプロン姿で忙しく、しかし楽しそうに準備をしていた姿を思い出す。アワビやイセエビといった豪華版とは無縁、という点では今も昔も変わらない▼料理研究家の辰巳芳子さんが、新年用に大根を炊く話を書いている。厚めに輪切りにして皮をむき、臭みを取るための洗米少しと梅干し一個を入れ、昆布を敷いた鍋で、中火で煮立てる。とろりと炊き上がったら、本八丁みそに卵黄、酒を少し入れ、すり合わせたもので食べるという▼母の大根煮ははるかに素朴だったが、年月は記憶を美化する。その記憶が「おふくろの味」として伝承されていく。辰巳さんは大根煮を「歳暮の滋味」と名付けている▼料理通の作家、池波正太郎は毎年特製おせちを食べたそうだ。3段重ねで20万円。一品一品に料理人の気迫がこもっていたという。その値段なら当然だろう。池波家も雑煮は自家製だが、餅は決して煮なかった。溶けて汁が濁るのを嫌うから、こんがり焼いて汁をたっぷりかける。高知では餅はアンコ入りで、少し硬くなったのがよいそうだ▼雑煮は誰でも成育地のものが一番と思っている。みそ仕立てで芋入りの京都、昆布だしの大阪、かつお節だしの東京。皆さんの新年の食卓は、どんな光景か。海外に出る人も含めて良いお年を。(倫)


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