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「紀南にコウノトリ」

 昨日の本紙に載った野生のコウノトリの写真に心が揺さぶられた。餌を探して田んぼを歩く姿と、白と黒の美しい羽を大きく広げた後ろ姿の2点である▼早朝から750ミリ相当の望遠レンズで撮影した記者によると、体長は80センチ前後。悠々と歩いている姿に見ほれたという。兵庫県豊岡市の県立コウノトリの郷公園が個体識別のために着けた足環から今年3月13日に徳島県鳴門市で生まれ、5月22日に巣立った雌だという▼この鳥には特別な懐かしさがある。僕が朝日新聞の編集委員だった2004年に担当した「環境ルネサンス」という連載の1回目に選んだのがこの鳥の再生と野生復帰計画の物語だったからだ。新聞の1面全体を使って紹介した記事は朝日新聞の英字版に転載され、海外からも取材が相次いだ▼その記事では、野生のコウノトリの生息地が失われて三十余年、人工増殖の試みが軌道に乗り、野生復帰計画が目前になったと紹介。この鳥が好むメダカやドジョウが泳ぎ、コイやフナがとれる水辺の再生は、人間にとっても住みよい環境づくりになると書いている▼環境再生の指標ともなるこの鳥が富田川の川沿いに飛来してきたということは、それだけこの地の自然環境が優れている証拠。人間にとっても住み心地がよいことを示している▼優雅な鳥が悠々と遊ぶ写真を眺めながら、この環境を人間の我欲から損なうようなことは、決して許せないと思った。(石)


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