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「南紀写真集」

 田辺市駅前のあおい書店主、多屋朋三氏は郷土史の研究と資料の収集でよく知られる。多屋氏が関係する熊野歴史懇話会の企画でこのほど富田、日置、椿温泉地区の古い絵はがき集があおい書店から出版された▼これらの地域はいま、白浜町になっているが、古い絵はがきという得難い資料で大正、昭和初期の旧町村時代を再現しようというユニークな企画だ▼収録された写真のいくつかを挙げてみる。臨済宗、草堂寺には長沢芦雪の名画が数多く残されており、芦雪寺とも呼ばれていた。お熊野さんと親しまれ、見事な桜並木を持っている権現平の桜の宮は、例大祭には京阪神から臨時列車が出るほどのにぎわいだった。金毘羅神社下の浜辺は、いつも時代劇の撮影場所になる秀逸な海岸美を誇っていたし、富田川河口の奇岩の数々も地元の自慢だった▼こうした絵はがきの撮影時代と現在の間には、地区を一変させた歴史の激動期、太平洋戦争と戦後の大混乱が介在する。多屋氏に求められて、元白浜町長で現県議の立谷誠一氏とともに、私も感想の一端を書いたが、往時の郷里を知るものには実に感慨深い▼その南紀もさらに大きく変貌する。中でも高速道路は自然豊かな故郷のたたずまいを一変させる。それだけに故郷にいる人々はもちろん、異郷にあって故郷のなつかしさに胸を焦がす仲間たちには、ぜひ手に取って、ありし日の故郷の姿に思いをはせてほしい。(倫)

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