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「プロの作詞術」

 30年ほど前、写真館の経営者から「写真は見たものを全て写してはいけない。写っていないものがあることで画面の外側に物語が広がる」と言われたことを今でも覚えている▼和歌山市出身の作詞家、及川眠子さんは近著「ネコの手も貸したい―及川眠子流作詞術」(リットーミュージック)に次のように書いている。「詞は、いかに相手に想像させるかが大事。それには説明を省いていく必要がある。説明が多いと、言葉以上には詞の世界が広がらない」と▼自身が作詞したヒット曲「淋しい熱帯魚」(Wink)や「東京」(やしきたかじん)、「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)などを題材に、構想の立て方や言葉の選び方、楽曲への言葉の乗せ方などを事細かに解説している。作詞のプロとして30年間培ったノウハウを多くの人に伝えたいという気持ちがにじむ▼例えば基礎編では「まず誰かの詞を写す」「次に写した詞の情景や設定を引用して別の詞にするトレーニングをする」といった練習方法から始め、場面設定の方法やタイトルの付け方までを手取り足取り教えている▼上級編では、あえて違和感のある言葉や気持ちが悪くなるイントネーションを使うことで、曲を聴いた人に強い印象を与えるというテクニックも明かす▼記者が書くのは説明の文章が中心。作詞とは縁の遠い仕事だが、音楽の楽しみ方を広げてくれる本として楽しく読ませてもらった。(長)


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