AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「『また明日』」

 先日から始まった本紙の連載小説が面白い。群ようこさんの『また明日』。しばらく続いた時代小説に代わって久々の現代物。それも軽い語り口が魅力の作家の作品である。

 ▼主人公は昭和30年3月3日生まれのヤヨイ。仲良しのお嬢様、ユリコからは「私たちザ・ピーナッツみたい」といわれ「振り向かないで」や「恋のバカンス」を声をそろえて歌う。グループサウンズが好きでザ・タイガースの「シー・シー・シー」をドーナツ盤で聴く。

 ▼友達もみな個性的だ。調子者のカツオはうっとうしいが、クラス一の巨漢、マスコちゃんは優しい。誰よりも大きいから横綱と呼ばれていたが、東京オリンピックで巨漢のタマラ・プレス選手が活躍してからはタマラと呼ばれている。隣のクラスには若秩父と呼ばれる女子もいる。

 ▼ザ・タイガースやザ・ピーナッツ、若秩父やタマラ・プレス、あるいはドーナツ盤と聞くと、無性に懐かしい。僕が東京五輪をテレビで観戦したのは大学1年生の時だったから、物語の主人公たちより10年ほど年長だが、こんな名前を聞くだけで在りし日がよみがえる。

 ▼東京五輪から半世紀以上が過ぎ、主人公たちもいまは60代半ば。老後についてあれこれと思いを巡らせる年代である。仲の良かった主人公たちがその50年をどのように生き、いまはどんな心境になっているのか。それを主人公と同年代の作者がどう紡いでいくのか。

 ▼楽しみでならない。(石)

更新)