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「おねがい ゆるして」

 幕末から明治にかけて、日本を訪れた外交官たちが一番驚いたのは、最下層の庶民が明るく和やかに暮らし、子どもたちをかわいがる姿だったという。渡辺京二さんが『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)に詳しく紹介している。

 ▼それから約150年。いま私たちが目にするのは、5歳児が残したこんな文章である。「もっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」。今年3月、両親から虐待を受け、栄養失調状態で亡くなった東京都目黒区の船戸結愛ちゃんがノートに鉛筆でつづっていた。

 ▼伝えられる内容がむごい。しつけと称して真冬に水をかけられたり殴られたり。家族の外出時には家に閉じ込め、寒い日にも素足で廊下に立たせる。衰弱してからは1歳児用の紙おむつをさせたまま。1回しか食事を与えられない日もあり、今年1月初めには16・6キロあった体重が死亡時には12・2キロになっていた。

 ▼そういう状況で必死に「ゆるして おねがいします」と、きれいな字で書き連ねた5歳児。その姿に思いをはせると胸が詰まる。涙が出る。

 ▼だが、その願いは両親にも行政にも届かなかった。以前住んでいた香川県では2回、児童相談所に保護されたが、東京都の児童相談所はその引き継ぎを生かせず、適切な対応ができないままだった。

 ▼この国の内実は150年前より退化しているように思えてならない。 (石)


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