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「身近な戦争遺跡」

 JR紀伊田辺駅の建て替えに向けて駅舎本体の解体工事が始まっている。今秋には改札の位置も変わるそうだ。86年の歴史がある建物である。思い出深い人も多いだろう。名残惜しいことと推察する。

 ▼田辺市南新町の楠本誠さん(88)も、そう感じている一人だ。終戦直後から40年余り、紀伊田辺駅で勤務した。本紙連載「近代化遺産の物語」でこの駅舎を取り上げた際、取材に協力していただいた。

 ▼戦後の混乱期から高度経済成長期、車社会の進展。そうした変遷を駅舎とともに肌で感じてきた。解体に人一倍感慨深いものがあるのも当然である。
 ▼その楠本さんに教えてもらった。今の駅舎は建築当初の様式をほぼ残しているが、それは大きな戦災を免れたからでもある、と。

 ▼もっとも、攻撃を受けなかったわけではない。1945年7月の空襲では、250キロ爆弾数発が駅に落ちた。しかし、爆弾は全て不発。ホーム側の上屋や柱、建物壁は機銃掃射を受けたが、駅舎は炎上しなかった。

 ▼楠本さんによると、機銃掃射の弾痕は戦後長らく残っていた。後に修理され、弾痕も見えなくなったそうだ。どのような修理が施されたのかは分からないが、駅舎の解体はまたとない好機だ。弾痕のある板が見つかったら、ぜひ保全を図ってもらいたい。

 ▼空襲から73年。戦争体験者から直接に話を聞くのが難しくなっている。代わって当時の様子を伝えてくれる遺跡を大切にしたい。 (沖)

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