AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「バラのとげ」

 あちこちでバラが咲いている。ピラカンサの白い花も独特の芳香を漂わせている。大学時代、キャンパスの中央にある広い芝生の周囲を囲む垣根に咲いていた花である。この花を眺め、香りをかぐたびに、半世紀以上も前の情景がよみがえってくる。

 ▼けれども、バラにもピラカンサにも鋭いとげがある。不用意に手を触れたりすると、とげが刺さって飛び上がるほど痛い。何度も手を出し、そのたびに痛い目に遭ってきた僕には、それもまた懐かしい思い出である。

 ▼つい先日まで、白い花を咲かせ、かぐわしい香りを振りまいていたミカンの木にもとげがある。植物生理学者、田中修さんの『植物はすごい』(中公新書)によると、こうした鋭いとげは動物に食べられることから身を守るために進化したという。

 ▼一方、柿やミカンの実は生育途上では渋かったり酸っぱかったりして食べられない。しかし、熟するにつれて甘くなる。カラスやヒヨドリに果実を食べてもらい、種子をあちこちにまき散らしてもらいたいからだという。植物はこうした工夫で子孫を残し、繁栄への道筋を描いているのだ。

 ▼では、人間はどうか。目の前のハエを追うことに懸命で、明日のことさえ考えていないように見える。不正を示す公文書を改ざんしたり、不都合な記憶は忘れたり。

 ▼公僕というのなら未来に責任を負い、歴史の検証に耐え得る仕事をしてほしいと願うのは僕だけではあるまい。 (石)


更新)