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「匿名性の落とし穴」

 先日、担当している大学の授業で「あいつだけは許せない」という小論文を受講生に書かせた。たいていは身近な人物のことをつづっていたが、中に思わず膝を打つような作品もあった。

 ▼一人はネットのニュースを探索するときに見掛ける「匿名に隠れて、デマを吹聴したり、平気で人を傷つける書き込みをしたりする人が大勢いる」ことに憤慨。罪を犯した容疑者ではなく被害を受けた女性を攻撃する人に怒り、匿名性に隠れて自分は無敵のような勘違いをしている人を厳しく批判していた。

 ▼別の女子は、大好きな芸能人がネット上で傷つけられているのを知って「私は病気で苦しむ人を中傷できる人の思考回路が理解できません」「SNSで人を中傷するのはとても簡単。陰口よりもリスクが少ないと思っているからです」などと書いていた。

 ▼振り返れば、知人の中にもネットに驚くほど乱暴な意見を書き込んでいる人たちがいる。社会的な地位、立場もあるのに、ことあるたびに「国賊」「死ね」などという粗雑な言葉で相手を罵倒している。ネット空間では人格が一変するのか。それとも業務用では見えてこない素顔がさらけ出されるのか。

 ▼ネット空間だけでない。人々はいま、相手に対する想像力が余りにも欠けているのではないか。意見の違いは違いとして、分かり合う所は分かり合う。黙って笑顔を交わす。そういう関係はもう昔話なのか。寂しい限りである。 (石)



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