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「農業遺産の底力」

 久しぶりに田辺市上芳養の紀州石神田辺梅林を訪れたら、改植した跡地に切り株を残した園地が目に付いた。聞くと、この地では切り株を取り除く農家はほとんどないという。

 ▼梅の木に勢いがある期間は短い。より多くの梅を収穫するため、多くの農家は25年前後で植え替える。その際、連作障害を防ぐために切り株を取り除き、土壌改良をすると聞いていただけに驚いた。

 ▼さらに聞くと、田辺梅林は急傾斜地が大半。園地に重機を入れることが難しいので、代わりに梅の木の斜面の下側を掘り起こしておく。そうすると切り株が除去しやすくなる。新たに定植する所はたこつぼ状に掘り、切った木をそこで焼いてから苗木を植える。灰が新しい木の肥料になるという話だった。

 ▼急傾斜地ではスプリンクラーなどの設備が使えないので、代わりに刈り取った草などを園地に敷き詰める。それによって暑い夏もしのげるそうだ。ともに何世代もかけて編み出した農家の知恵だ。「けれども昨年は予想外の不作。一昨年の猛暑がこたえたようだ」とという。

 ▼一方、みなべ町の知人は切り株は土に返るまで畑に放置しているが、連作障害に悩まされたことはないという。

 ▼地形や土壌、気象条件は園地によって異なり、それに応じた栽培方法が考案されている。そうした知恵もまた世界農業遺産に認定された「みなべ・田辺の梅システム」の底力。その一端を切り株に見た気がする。 (沖)



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