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「皆既月食」

 「幸運にも」という言葉がぴったりの天体ショーだった。昨晩、ほぼ3年ぶりに出現した皆既月食のことである。

 ▼田辺の市街地から空を見上げていると、午後8時48分ごろから月が欠け始め、1時間3分後、完全に地球の影に入った。それまで地上を照らしていた白い月に代わって、赤銅色に鈍く光る月が丸く浮かんでいる。

 ▼しかし、皆既月食の完成を待っていたように、赤い月は雲に覆われてしまった。少し西側の空に輝いていたオリオン座も見えない。空は真っ黒。白い月が欠け、赤い月が出現すると同時に、月も星も消えてしまったように思えた。

 ▼自宅に戻り、インターネットで情報を確認する。「奈良では全く見えない」「豊中では見えた」などという情報が刻一刻と流れ、写真も次々にアップされる。部屋から一歩も出なくても、現実の月は雲間に隠れていても、ネット上では天体ショーが続いているようだった。

 ▼けれども、月や星の運行に関する知識のない時代だったら、こうした「天変」に人々はどう対応したのか。天に向かって手を合わせ、ひたすら祈ったのか。オロオロ歩き回ったのか。互いに手を握り、震えながら厄災の去るのを待ったのか。

 ▼そんなことを想像をしながら、月食を「ショー」として観察できる私たちは、なんと恵まれているのかと思った。同時にその分、人は傲慢(ごうまん)になり、自然を敬う気持ちが薄れているのでは、とも感じた。(石)

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