AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「薬物混入とスポーツの価値」

 「パラ・ドーピング」という言葉がある。スポーツ界で禁止されている薬物を他の選手の飲食物に混入する行為を指す。

 ▼カヌー競技で東京五輪を目指す有力選手が競争相手の若手選手の飲料水に禁止薬物を混入してドーピング違反に陥れる事件が発覚した。日本では例のないことであり、反ドーピング五輪に取り組む日本への信頼と、アスリートのイメージを失墜させる行為である。

 ▼日本カヌー連盟によると、問題を把握したのは昨年11月。ドーピング検査で被害者の尿から陽性反応が出たことを契機に個別の聞き取りを実施。その後、加害者が「私がやりました。私の愚かな部分、弱い部分が出ました」と犯行を告白したという。

 ▼世界では、禁止薬物を摂取して筋力を増強したり精神を高揚させたりする例がプロ、アマ問わずに広がっている。違反者への処分も厳しくなっている。そういう状況だから、世界の一流選手は「同僚がくれたものでも口にしないことが常識」という。

 ▼この事件で思い起こすのは昨年9月、男子100メートルで桐生祥秀選手が9秒98を出したとき、2位になった多田修平選手の言葉である。彼は「悔しいけど、うれしい。これに乗っかって、僕も9秒台を出したいというやる気が出ました」といった。

 ▼ライバルをたたえ、それを励みにする。ここにこそスポーツの価値、妙味があるのではないか。今回の事件をこの価値を広く教えるきっかけにしたい。 (石)



更新)