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「200年間現役に幕」

 次代に伝え、残したい歴史遺産が紀南にはたくさんある。江戸時代後期に造られた白浜町の安居暗渠(あごあんきょ)もその一つだ。

 ▼これは、河床が低いため不可能とされてきた日置川からの取水を可能にするために設けられた施設。山裾に沿って蛇行する日置川の高低差を利用し、山の岩盤を6年かけて約270メートル掘り進め、文化2(1805)年に完成。安居、寺山両地区の水田を潤してきた。

 ▼導水路から取り入れた川の水は暗渠と用水路を通り、暗渠完成以前の数倍にあたる約37ヘクタールの水田を養ったという。池の水を使っていたころには毎年のように繰り返された水争いもなくなった。だが、6年前の紀伊半島大水害で導水路の一部が壊れ、地元の水利組合が修復を断念した。

 ▼それまでは自然災害に遭うたび、農家が協力して施設を守ってきた。しかし、農家は減少、高齢化も進んで「早晩、災害復旧工事に伴う受益者負担に耐えられなくなる」と組合が判断した。「苦渋の決断」と市川博組合長。

 ▼もっとも、大水害後は川の水をポンプでくみ上げており稲作には困らない。けれども、200年以上に及ぶ暗渠の活用に幕を下ろすことになり無念な思いは消えないという。

 ▼この施設を造るため、当時の庄屋は私財をなげうち借財もした。工事に協力した農家らは塗炭の苦しみを乗り越えてきた。節目を迎えたいま、その歴史を顕彰し、保全、再利用に衆知を集めてはどうか。 (沖)



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