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「古道の紅葉を巡る」

 深まる秋の楽しみの一つが熊野古道沿いの紅葉狩りだ。スギやヒノキの人工林が増えた熊野の森では、山全体が染まるような場所は少ないが、その分、赤や黄色の彩りは一段と映える。

 ▼先日、語り部の方に教えてもらった田辺市中辺路町高原の紅葉スポットを訪ねた。霧の里休憩所から近露方面に向けて古道の坂道を20分ほど上る。こけむした石畳を踏みしめて進むと、やがて明るい景色が開けてくる。

 ▼そこには左手に民家跡、右手には枝を四方に張ったスギの巨木がある。スギの後ろに大きなカエデが枝を広げており、赤や黄色に染まった葉が晩秋の光を浴びて輝いている。かつては、熊野詣での人たちもこの紅葉をめでていたのだろう。

 ▼古道の趣を味わえる名所の一つが中辺路町野中の「とがの木茶屋」。かやぶき屋根の庵(いおり)をカエデが彩り、古道歩きの人たちを迎える。年によって色合いが変わり、今年は黄色が主役である。撮影スポットとして写真愛好家にも人気がある。

 ▼この時季、天気が悪くてもがっかりすることはない。雨の王子社にはしっとりぬれた紅葉が似合う。たとえ盛りを過ぎていても、境内に散った落葉に風情がある。見頃を迎えたかと思うと風雨に散る紅葉は、その華やかさとはかなさが同時に味わえ、余韻に強く引かれる。

 ▼名所ではなくても、古道歩きの道中では、はっと驚くような紅葉にしばしば出合える。その一期一会を楽しみたい。 (長)



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