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「司馬遼と古座川町」

 作家、司馬遼太郎氏の古座川町にある山荘が最近、司馬遼太郎記念財団の手で修復された。

 ▼司馬氏の『街道をゆく』シリーズは、晩年を飾る名作でその足跡は全国の隅々にまで及んだ。好奇心のおもむくままに、有り余る学識と関係者の証言を巧みに織り交ぜながらの独特な語り口。その司馬節に魅せられた読者は多かった。

 ▼なかでも何回も訪れた古座川町の豊かな自然を氏は心から愛した。特に川下りをした古座川では「清流のせせらぎ」を初めて実感したと書いた。沿岸の名所、巨大な一枚岩は「大きな嫁入りまんじゅうを包丁で真っ二つに割ったよう」と形容する。

 ▼さらには古い庄屋屋敷跡を乱開発防止に役立つならと買い取り、山荘を建てた。同氏の死後、私は司馬ファンだった紀南の友人の案内で、この山荘を訪ねた。表札には「福田」とあった。同じ新聞社で氏が福田定一という私の上司であったころを懐かしく思い出した。

 ▼皮肉なことに、2011年の大水害で古座川が氾濫し、山荘も使用不能になった。そこで財団の手で復元し、ファンらでつくる「友の会」の事業に生かすことを決めたという。

 ▼司馬氏の義弟で財団の上村洋行理事長に、具体的活用法を聞いた。同氏は日本の原風景が残る古座川を中心に『山荘と熊野・古座街道をゆくツアー』を9月末に企画し、セミナーも考えたいという。司馬さんの意志が紀南の一角に根付くことはうれしい。(倫)



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