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「がんの告知」

 「厳しいことを言いますが、しっかり受け止めてください」と主治医。昔の職場の後輩である患者に緊張が走る。内臓の進行がんと告知されたが、標準治療法が未確立の珍しいタイプという。

 ▼「余命はあと何年ですか」と奥さん。「何もしないと1年以下です。でもやりようはあります。がんを制御しながら、現在の元気を維持できるようにお互いに努力しましょう」という緊張したやり取りが続いた。

 ▼がん告知は、全国の病棟で毎日のように繰り返されているだろう。この患者は46歳の働き盛り。妻と1歳の子がいる。「死んでも死に切れない」という彼の気持ちが痛いほど分かる。同じ年齢の頃、私もがんを告知され、生と死は四分六と言われた。幸いなことに後日、誤診と分かった。

 ▼人生の深刻な危機に取り組むには、医師への信頼に基づく相互理解が不可欠だ。上記のやり取りには「真実は告げなければならないが、患者を絶望させてはいけない」という医師の心得がよく出ている。この患者は家族のために今、必死で生きる努力をしている。

 ▼医者と患者は上下の関係を超え、心を通い合わせるようにすべきだ。その意味でがん専門医・里見清一博士の『医者と患者のコミュニケーション論』(新潮社)は、医師の立場から努力すべき諸点を、細部にわたって具体的に論じている。「こんな医師に当たったらなあ」と願う多くの患者に救いを与えてくれる本だ。 (倫)


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