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「水のこと」

 20年ほど前、朝日新聞の和歌山支局長をしていた頃の話である。転勤で高知県から新宮市に移ってきた同僚が「とくに紀南の川は美しい。高知では四万十川が有名ですが、古座川の方がはるかに素晴らしい」と絶賛していた。

 ▼彼によると、透明度も素晴らしいが、それ以上に水辺の景観がすごいという。「とりわけ古座川がいい。本流も支流も源流も、それぞれ魅力があります。取材で出掛けるたびに、これこそ日本の原風景だと感動します」と力説していた。

 ▼この説には全面的に賛同する。僕の住んでいる田辺市に限っても日高川、会津川、富田川、日置川、熊野川の水系があるが、源流に近づけば近づくほど、天下に自慢できる清流がある。川を中心にした暮らしがあり、文化がある。

 ▼そういう紀南の水の魅力にとりつかれた写真家、内山りゅうさんが写真集「水のこと…水の国、わかやま。」(講談社エディトリアル)を出版した。紀伊山地の山霧から白浜町沖に発達した巨大な雲まで、水の循環を写し取った81点を収録している。

 ▼悠々と蛇行する川、次々に姿を現す滝、澄み切った渓流、水とともに生きる生物や人々の暮らし。水中に潜り、魚の目のアングルで切り取った写真も多い。その清明な写真は、眺めているだけで気分が爽快になる。

 ▼聞けば、県の主催で5月には東京、7月には福岡、9月には大阪の、それぞれ富士フイルムフォトサロンで写真展も開かれるそうだ。 (石)



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