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「幼児期の教育」

 僕が小学校に入学したのは1951年4月。当時、村には幼稚園も保育所もなく、両親は毎日、農作業に追われていた。当然、入学前に文字を教わる機会はなく、入学式の直前に母親が「いしいのいは、牛の角の形、しは釣り針の形。この二つを覚えておけば、名前は読める。あきらは難しいから学校に入って習えばいい」と教えてくれた。

 ▼前にならえという号令も整列という言葉も、学校に行くようになって初めて知ったが、それで何一つ不自由はなかった。毎日、新しいことに出合えることが楽しく、1年生の時は皆勤賞だった。

 ▼しかし県教委はいま、そういうお気楽な姿勢ではなく、幼児期の教育により多くのことを求めている。先日、県の知事部局と教育委員会が開いた会議では、小学校の入学前に「自立心や協同性、道徳性や規範意識の芽生え」など10項目を身に付けさせるための議論が交わされた。

 ▼簡単にいえば、小学校入学の前に「幼稚園や家庭での教育をよろしく」ということらしい。もっといえば、しつけのできていない子は学校生活に適応できませんよ、といっているのかもしれない。

 ▼こういう姿勢で、教育機関としての学校の責任が果たせるのだろうか。たとえ幼稚園や家庭の教育に足りない点があっても、それを丸ごと引き受けて育てるのが義務教育を担う学校の役割ではないか。責任を他者に求める発想では、問題は何一つ解決しないと知るべきである。 (石)



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