AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「読書は魂のふるさと」

 文藝春秋社の友人が今年も新しい「文藝手帳」を贈ってくれた。作家の連絡先が網羅されており、何かと重宝する。

 ▼そこには芥川賞、直木賞の一覧もある。賞を創設した文藝春秋社長、菊池寛の「審査は絶対公平」という言葉に続いて、1935年上半期の第1回から2016年上半期の155回までの受賞者が網羅されている。それを眺めているうちに往事の読書遍歴が浮かび上がってきた。

 ▼受賞作で最初に読んだのは直木賞の新田次郎『強力伝』。55年のことだから僕は小学5年生。同じ年の芥川賞は石原慎太郎『太陽の季節』。こちらは少し遅れて、村の図書館で借りた。芥川賞では57年の開高健『裸の王様』、58年の大江健三郎『飼育』を図書館から借りて読んだ。

 ▼大学生になると、柴田翔『されどわれらが日々』、五木寛之『蒼ざめた馬を見よ』、野坂昭如の『アメリカひじき』と『火垂るの墓』。それぞれ購入して何度も読んだから思い入れは強い。

 ▼これらの受賞作に限らない。小学5年生で自宅にあった吉川英治の『宮本武蔵』全6巻を読み、中学、高校時代は石川啄木の短歌や萩原朔太郎、中原中也の詩に心をときめかせ、暗唱までしていた。

 ▼振り返れば、僕の骨格が少年時の読書で形成されてきたことがよく分かる。魂の故郷といってもよい。文部科学省は今後、英語教育に力を入れるそうだが、その前に、もっと日本語の文章に親しませる工夫が必要ではないか。(石)



更新)